北欧神話ー参考文献

北欧神話のまとめが終わった。
載せてないユニークなエピソードはまだまだある。
神話と史話の境界がよくわからないサガもあって、興味は尽きない。
ケバダチ個人は、まだまだ北欧神話とそれに関わる歴史や文化を調べていくことになるでしょう。
オーディンのエピソードもほとんど載せてないけど、ひとまず、
パペガに関する事柄はまとめられたんじゃないかと思うので、ここでおしまい。
読んでくれた人、お疲れ様〜
終わりで〜す。
 
「へ〜。新階層も北欧神話縛りなのか〜」と知り、興味を持って調べ始めたのが冬。
春からまとめはじめ、夏が過ぎ、すっかり秋も深まりw
雪の便りも聞かれるようになってしまい、1年近くかかってしまった^^;
いつまでも本の山が片付けられなくて、来客者に呆れられてたけどw
クライアントに逃げられない限り、やると決めたら最後まで。
これがケバダチ流。
時間かけるのは主義じゃないけどw やって良かったよ。
自分の無知がよ〜くわかったからw
 
歴史、宗教、ヴァイキングのことなど、それなりに知ってるつもりだったけど、
振り返ると、上っ面だけだったな〜と思う。
スウェーデンの人が祖先がヴァイキングであることを誇りに話してくれたこと、今なら理解できる。
副産物がいろいろあった。
北欧神話の神々は、ゲームで取り扱われることが多いためか、男友達がそれなりに知っていて、
(わたくしの周りの女子は全滅だったけどねw)
戦うということに対しての男の考えを聞くことができたのは、今までの飲み会じゃなかったこと。
とにかくこの話題で友達の内面もよくわかるようになったのが良かった。
仕事上でしか話すことはない外国の人に、自国の歴史を話せてもらえたのも収穫だった。
 
それと、しつこく調べることによって、スノッリへの評価が変化した。
北欧神話をきちんとまとめたアイルランドの詩人であり政治家のスノッリ・ストゥルルソン。
当時、キリスト教が台頭してきて、アース神への信仰は異教・異端として押し込める方向だった。
調べ始めた当初、やはりキリスト教に改宗させる手立てとして、北欧神話を都合良く書き換えた。
そう思っていたし、実際、そういう書き換えも感じられた。
wikiなど、彼の野心家の部分を大きくとりあげている。
確かにそういうところもあったけれど、それだけじゃない、
祖先への愛も深く、キリスト教とアースへの信仰との間で苦悩するスノッリの姿も浮き上がってみえてきた。
多分、このブログのはじめの頃は、スノッリの文章に否定的な書き方をしていたと思う。
でも今は、彼の祖先への愛に感謝したい。
もちろん、彼の愛によって、残された文章は全てが正しいわけじゃない。
けれど、残してくれたことに感謝だ。
 
最後に参考文献。
海外のサイトもかなり見たんだけど、論文書くわけでもないから、いちいちブックマークしてなくてw
ちょっとだけです。
 
<参考文献及びサイト>

THE POETIC EDDA (http://www.sacred-texts.com/neu/poe/)
The Haustlong of Thjodolf of Hvin (http://www.gutenberg.org/files/598/598-h/598-h.htm)

「エッダ 古代北欧歌謡集」 谷口幸男訳 新潮社
「北欧神話」 菅原邦城 東京書籍
「巫女の預言 エッダ詩校訂本」 シーグルズル・ノルダル 東海大学出版会
「北欧神話と伝説」 ヴィルヘルム・グレンベック 講談社学術文庫
ヴィジュアル版 世界の神話百科 ギリシア・ローマ/ケルト/北欧」 アーサー・コットレル 原書房
「北欧神話」 P・コラム 岩波少年文庫
神話の名シーン集 ヴィーナスの片思い」 視覚デザイン研究所
図解 北欧神話」 池上良太 新紀元社
「ヴァイキングの世界」 谷口幸男 新潮社版
「ヴァイキング」荒正人 中公新書
「知」のビジュアル百科 ヴァイキング事典」 マーザン・M・マーグソン あすなろ書房
「偶然とは何か 北欧神話で読む現代数学理論全6章」 イーヴァル・エクランド 創元社
「エッダとサガ 北欧古典への案内」 谷口幸男 新潮選書
「北欧文学の世界」 山室静 東海大学出版会
「古代人はどう暮らしていたかー実験考古学入門」 ジョン・M・コールズ どうぶつ社
「ゲルマーニア」 コルネーリウス・タキトゥス 岩波文庫

その他、個人出版物、論文、北欧の博物館サイト、研究者サイトなどを参考にしました。
 
 
自分のためにまとめた記事だったけど、読んでると言ってくれる人が何人もいて、
ほんと、恥ずかしくも嬉しいです。
少しでも北欧神話に興味をもってもらえたら、まず訳本からいろいろ読んで楽しんでほしいです。
ゲームクリエーターのために、おもしろくまとめた本なども多数出版されてるけど、
いいのもあるし、そうでない上っ面だけのもありますね。
ケバダチがいいなぁと思った書籍は、絶版ものが多い。
(だから中古本ばかり ^^;)
まぁ、ケバダチの計りは、訳者にしろ著者にしろ、
その人となりが見えてくる本や、愛や情熱がみえる本に反応するんで、
偏りがあります。あは〜^^;
 
 
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北欧神話ーラグナロクとその後

レクイエムイベントが始まりました。
けれど、こちらのケリをつけないと気になって楽しめない。
イベントを楽しむために、遊ばずこちらを優先w
ゲームに関わる内容じゃないので、スルーでどうぞ。
 

ラグナロク
 
ラグナロク(ラグナレク) Ragnarøk は「神々の黄昏」「神々の運命」「終末の日」を意味し、
日本では「神々の黄昏」の呼び名が一般的。
始まりがあれば終わりがある。
アースの神々の世の終わりだ。
 
主神オーディンははじめからこの日が来ることはわかっていた。
それは避けられない運命。
とはいえ、おめおめと引き下がるわけにもいかない。
オーディンはこの日を乗り越えるために、優秀な死者をエインへリアル(死せる戦士)として集めていた。
なんとか乗り切ろうとしてたんだ。
しかし、運命の日、世界は焼き尽くされ、終わりを遂げる。
 
その始まりは「大いなる冬(フィムブルヴェト)」といわれる長い冬からだった。
雪が四方八方からふきつけ、霜は厳しく、風は身を切るようにきつい。
太陽はまったく役に立たず、夏が来ない。
それが3年続く。
 
吹雪
こんな感じかなw
 
兄弟同士が戦い合い、殺し合うであろう。
親戚同士が不義をおかすであろう。
この世は血も涙もないものとなり、
姦淫は大手を振ってまかりとおり、
鉾の時代、剣の時代がつづき、楯は裂かれ、
風の時代、狼の時代がつづいて、
やがてこの世は没落するであろう。
誰一人として他人をいたわる者などないであろう。
 <「巫女の預言」45章>

 
はじめの1年は「風の冬」といわれる。
大嵐が続き、大雪が襲い、霜がひどい。
夏が来ないのだから凶作だ。
寒い地方ほど保存食の準備はされていたはずだが、やはり飢餓状態となっただろう。
この年に、人間の子どもはほとんど生きていられなかったと思われる。
 
2年目は「剣の冬」
続けて1年中冬だ。凶作。
人間も動物も生き残ったものは、生きていくために残されたものを、奪い合い、殺し合う。
親兄弟も関係ない。
モラルがなくなり、男だろうが女だろうがレイプの対象。
世界中いたるところで、戦争が起こった。
この争いは、それまでの、死後の行く末を左右する名誉をかけた戦いとは違う。
人間に品位などなくなってしまったようだ。
 
3年目は「狼の冬」
やはり1年中冬。
マーナガルムが大きく成長する時だ。
鉄の森の魔女が、土に埋められてない人間や、戦いで倒れた人間の死骸を、
マーナガルムに食べさせて養ったから。
月のマーニを食べ殺す役目のマーナガルムは、成長して元気旺盛だった。
生き残った人間もいるんだが、埋葬する感覚もなくなっていたんだろう。
マーナガルムは餌に不自由しなかったようだ。
 
大いなる冬で最初に影響を受けたのは人間だったということだね。
ひどいもんだ。
人間界は混乱し、無法地帯となった。
そしてこの人間界の混乱は、諸世界に波及していく。

このひどい冬の3年で、太陽は意味をなさなかったが、星もまたそうだった。
1つ、1つと、深淵に落下していく。
大地は上下に揺れはじめ、木々の根が緩み倒れはじめる。
怪物たちを捕らえていた紐や縄が緩みだした。
拘束されていたフェンリルの紐も、ガルムをつないでいた鎖も、緩み出す。
 
まずニワトリが鳴いた。
ヘルの館の側にいる、赤さび色のニワトリだ。
亡者たちが目覚め起き上がる。
 
合図
 
ヨトゥンヘイムでは真っ赤なニワトリのフィヤラルが鳴き、
巨人達が起き上がった。
アースガルドでは黄金のニワトリ、グリンカムビがユグドラシルのてっぺんで鳴き、
エインへリアルたちが奮い立つ。

血だらけの口をしたガルムが吠えた。
それを聞いたドヴェルグたちは、石の戸口に出てうなる。
世界樹ユグドラシルは、どの枝もどの枝も震え、なげきのうめき声をたてた。
巨人たちが船を動かす、恐ろしい音がする。
ムスペルスヘイムの軍勢が馬を集めるバタバタという、やかましい足音もする。
 
しかし、灼熱の国ムスペルスへイムも、巨人の国ヨトゥンヘイムも、亡者のいるヘルへイムも、
誰もが震えながらもまだ待ち構えていた。
彼らはフェンリルが飛び出す時を待っていた。
フェンリルなしではアースの神々を打ち破ることはできないと思われていた。
 
その時、狼(スコル)が太陽を呑み込んだ。
さらにほかの狼(ハティ)が月につかみかかり、大損害を与える。
星々もついに全て天から落ちてしまった。
 
大地と山は震え、木々は根こそぎにされ、山は崩れ、全ての枷が意味をなさなくなった。
岩が破裂するものすごい音と共に、フェンリルはついに紐を引き裂いて自由になった。
飛び出るフェンリル。
 
ラグナロクフェンリル
ケバダチクオリティw
 
上あごは天をかすめるほどに、下あごは地を掃くほどに口を大きく開け走り出す。
もしも場所があったならば、もっと口を開けたろう
その目と鼻孔からは火が噴き出す。
めざすはアースガルドだ。
アースの神々を滅ぼす時がきたんだ。
 
ガルムも自由になり、吠えながら走る。
 
ラグナロクガルム
 
ミズガルズの大蛇ヨルムンガンドも激怒にかられ、大波と共に岸に向かっていく。
 
ラグナロク蛇
 
この大波にナグルファルが浮かぶ。
ナグルファルは巨人たちを乗せる船だ。
 
ラグナロク巨人
 
この船は死者の爪から造られてる。
人が死んで爪を切らないでおくと、この船の完成を早めることになってしまうので、
ヴァイキングやその祖たちは、葬儀の際、爪を切るのを慣習にしていた。

 
ムスペル軍団は馬で駆けつける。
その先頭はスルトだ。
 
ラグナロクスルト

彼の前と後ろには燃える火がある。
彼の剣は逸品で、太陽よりも明るく輝く。
 
アースたちを倒そうと、四方八方から集まってくる。
ロキも拘束が解け、ヘルへイムの亡者たちを引き連れてやってきていた。
 
ラグナロクロキ

スルト率いるムスペル軍団がアースガルドへの虹の橋=ビヴロストを渡ると、橋は砕け落ちた。
緊迫感のないの絵が続いたがw 今、反アース軍集結。
その野(ヴィーグリーズの野、またはオースコープニルという説もある)は方位4〜500マイルの広さだ。

この出来事で虹の橋の門番ヘイムダルが立ち上がる。
そして高らかに、力の限り、ギャランホルンを吹き鳴らす。
 
403px-Heimdallr_by_Froelich.jpg
「ヘイムダル」ローレンツ・フレーリヒ

その音で神々全員が目覚め、会議を開く。
(今頃会議ってw 予知されてたのに対策してなかったって、どこかの行政みたいじゃないのw)
オーディンはミーミルの泉へ行き、ミーミルの助言を請う。
 
ミーミルはオーディンの伯父にあたる巨人で、賢者の神。
ヴァン神族との和平協定でヘーニルと共に人質としてヴァン神族のもとへ行った。
ヘーニルがあまりにも立派な見た目だったので、ヴァン神族は喜んで首長にしたが、実は能なし。
何でもかんでもミーミルに決めてもらっていたと知り、怒ってミーミルの首をはねてアースへ送り返した。
オーディンはその首を薬草で腐敗しないようにし、魔法によって話す力を蘇らせた。
以後、ミーミルの首はユグドラシルの泉におかれ、その泉は彼が守っている。
知恵と知識の泉だ。
オーディンも賢くなりたくて、片眼を担保にして、その泉の水を一口もらうことができた。
(それ以来オーディンは片眼になった)
これによってオーディンはアースでもっとも賢い神となったが、
ミーミルは毎朝この泉の水を飲んでいるので、オーディンの比ではない賢者ということになっている。
ラグナロクに突入したという段階になって助言を求めたオーディン、ということだが、
一体どんな助言をもらったのか、手持ちの資料には何もない。
「運命だ。がんばれ」ぐらいなのかもしれないw
 
mimir.jpg
↑ ケバダチの想像 神話に書かれてはない
「宇宙の終わりではない」という予言をオーディンは受けている。
それがミーミルのものかどうかケバダチにはわからない。
負けが見えていて助言しようがなかったとしたら、
未来はあると、勇気づけしたぐらいじゃないかなと思う。

 
この間も、ユグドラシルはおびえ震える。
震えはすべての生物たちに伝わり、妖精もドヴェルグもその他の動物たちも恐怖におびえていた。
神々は急いで甲冑に身を包み、武器を手にした。
すべてのエインへリアルと共に、オーディンを先頭にかの野へ向かう。
決戦だ。
 
グングニルを手にしたオーディン。
黄金の兜と華々しい鎧を着け、スレイプニルにまたがってフェンリルに向かう。
トールもオーディンに並んで馬を進めたが、腕を貸すことはできない。
トールはヨルムンガンドを相手にするだけで手いっぱいだった。
フェンリルはその大きな口でオーディンを呑み込んでしまった。
なんてことだ。
あっと言う間だ。
しかしすかさずヴィーザル(ヴィダル、オーディンと巨人グリードとの間の息子)が特別な靴を履いた片足で、フェンリルの下あごを踏みつける。
そして両手で力任せに上あごを押しあけ、バリバリとフェンリルの口から喉までを引き裂いた。
 
ヴィーザル

 
フェンリルはこれで死んだ。
ヴィーザルが剣で心臓を刺したというエッダもある。
 
勝利の父の逞しい息子、ヴィーザルは死肉の獣(フェンリルのこと)を相手にわたりあい、
フヴェズルング(ロキのこと)の子の心臓を、手にした剣で刺し通し、こうして、父の復讐をとげる。
 <「巫女の予言」55章>

 
天と地ほどに開く口を、さらに押し開いて引き裂くなんて、ちょっとどれだけの巨人なの?
と思うから、ケバダチとしては剣で刺し殺したほうが現実的に思えるんだけど、
口を引き裂いたほうが絵的に迫力あるんだろうね。
こちらの説のほうが人気だ。
 
1024px-Vidar_by_Collingwood.jpg
「ヴィーザル」1908、W. G. コリンウッド

 
ともかくも、フェンリルはオーディンを亡き者にしたが、息子によって殺された。
 
フレイはスルトを相手に戦った。
魔剣を失っていたが、激しい闘いがあったそうだ。
普通の剣でがんばったんだよフレイは。
けれど、炎に呑まれてフレイは死ぬ。
 
フレイvsスルト
 
ガルムの相手はチュールだ。
チュールは軍神。
公平で民会の守護者。
オーディンらアース神の信仰が生まれるよりも前から、ゲルマン民族の初期から信仰されていた神だ。
(北欧神話はスカンジナビア地方で花開いたが、元はゲルマン民族にある)
勇敢なためにフェンリルに右手をくわれてしまっていたが、
そこは軍神、左手でも人並み以上の剣の使い手だ。
だが、人並み以上ではガルムに打ち勝つことはできなかった。
チュールの剣がガルムを打つのと同時に、ガルムに噛み付かれ相打ちで終わる。
 
チュールvsガルム
 
トールはヨルムンガンドだ。
ヨルムンガンドは毒の息をまき散らしていた。
しかしミョルニルがある。
怪力のトールがミョルニルでヨルムンガンドの脳天をかち割ったんだ。
今まで2度ほど対決していた、その雪辱をはらしたんだ。
けれど、勝利して9歩しりぞいたところで、毒がまわってトールは崩れ落ちた。
息絶えていた。
 
トールvs大蛇

また別の場所では、ヘイムダルがロキと戦っていた。
互いに致命傷を与え、あい果てた。
 
ロキvsヘイムダル
↑ こんな戦いじゃないよねw
ヘイムダルへの言い分は「ロキの口論」
山羊とのくだりは「詩語法」にある。
ケバダチに痛みはわからないけれど、
読んだ男の人は恐ろしくて想像したくないとおびえるw
 
こうして・・・
今や戦場に立つのはただ一人、スルトだけとなった。
スルトは炎を大地に投げる。
 
__狂いたつのは火
そして炎、
高く燃えあがるほむらは
天そのものに戯れる
 <「巫女の預言」57章より>

 
全世界が火炎に包まれ、燃えあがる。
スルトの火は、全てを焼き尽くす。
オーディンを主神としたアース神たちの世が、全て灰と化した。
アースの世の終わりだ。
 
炎

 
ラグナロク。避けられない運命だった。
本当に避けられないものだったんだろうか。
 
研究者はこういっている。
巨人族は始まりからアース神族を憎んでいた。と。
というのも、この世界を創造したのはオーディンとその兄弟なんだが、
世界の元は巨人を殺害したものだった。(オーディンー天地創造
この世に最初に誕生した巨人、ユミルだ。
このユミルを殺害して、その体から山や木など作っていく。
巨人族にすれば、最初のご先祖さまを殺害された恨みがある。
それだけじゃない。
フリームスルスという巨人をだましてアースガルドの城壁を作らせ、しかも殺害したアース神。
だませばいいと提案したのはロキだったが、それに乗ったのはアースたちなんだ。
だますことをアースたちが決めたわけだ。(オーディンースレイプニルとスヴァジルファリ
なるほど、城壁のことはひどいとケバダチも思った。
「ロキの口論」では、アース神の宴会でロキが悪口をいう場面がえがかれている。
しかし、ロキのいうのももっともだと思うこともいくつかあった。
エッダやサガを読んできて、アース神族は巨人たちに対して理不尽すぎると何度も思った。
その度に、巨人たちはアースへの憎しみを増幅させていったんだろう。
 
オーディンはそれがわかっていたんだ。
恨みを買うだけのことをやってたと、十分に承知していたんだ。
だから、いつかは巨人達に攻め込まれる(ラグナロクがくる)とわかっていた。
それならなぜ、巨人達に謝罪して共に生きようとしなかったんだろうか。
共生という言葉や概念はなかったんだろうか。
 
これが「時代」なのかもしれない。
身分階級がわかれているように、正義と悪は相容れないものとする時代だったのかと思う。
今では「正義という名の暴力」という言葉があるように、正義が必ず正しいとはいいきれない。
悪もそのレッテルをはずしていくというのもわかっている。
(もちろん、変わらない人もいるけどね)
そういう時代だと思えばそれで終わる疑問だけれど、まだ納得しかねてるケバダチだ。
オーディンとロキは義兄弟となっていた。
「神と巨人」「正義と悪」
相反する関係でありながらも、同じ家族として契りを結んだ。
この関係に共生の芽があったはずじゃないか、と思うのは深読みか、理想の押しつけか。
しかし、それは相容れない関係だったのだと神話に突き放される。
血は変えられない、と言われてしまう。
困ったw
ラグナロクは避けられないものだった。
納得できてないけれど、受け入れるしかなさそうだ。
(う〜ん←まだ頷けないw)
 
 
神話に戻ろう。
 
ラグナロクの後
 
世界が炎に包まれたが、やがて、炎が消え落ち、全てが静まり返った。
すると、静かな海の中から、再生した大地が青々と浮き上がってくる。
その大地の上には、誰が種をまいたわけでもないのに、麦の穂が風に揺れている。
山腹を滝がたぎり落ち、鷲が滝の上高く、輪をえがいて飛び、魚を狙っている。
 
大混乱の後に緑の大地が広がるなんて、なんだか宮崎アニメのラストシーンみたいだ。
ただ北欧神話では太陽も月も星もなくなっているんだ。
青々とした緑がなぜ見えるかって思うよね。
実は、太陽は呑み込まれるその時、彼女自身におとらぬ美しい一人の娘を生み落としたんだ。
わお。
この新しい天の光は、神々が死ぬと、母親の軌道を同じく回り始めたんだって。
空に太陽は戻ってたんだね。

新生

 
緑の大地を、ヴィーザルとヴァーリが歩く。
(ヴィーザルはフェンリルを殺し、オーディンの仇をとった寡黙で孤独な神)
(ヴァーリはヴィーザルと異母姉妹。バルドルの復讐にヘズを殺すため、生まれて1日で大人になった神)
この神たちは、大波も炎も害することがなかった。
そこへトールの2人の息子モディ(モージ)とマグニが無傷で助かり出てきた。
彼らは父親のハンマーを見つけた。
バルドルとヘズ(ホズ)も死の国ヘルへイムから、手を取り合って戻って来た。
 
皆はアースガルドの立っていたイダの野に住居を建てる。
彼らが草の中に腰をおろすと、芝生の中に昔の黄金の将棋盤が見つかる。
彼らは昔おこった偉大なことを語り合い、ミズガルズ蛇のことや、トールの剛勇や、オーディンの深い知恵など回想する。
 
と、森の中(燃え残ったユグドラシルの一部分)でいきものの気配が動く。
そこに二人の人間リーヴ(リフ)とリーヴスラシル(リフトラシル)が隠れて、朝露をなめて飢えをしのんでいた。
 
リーヴとリーヴスラシルの両名
ホッドミーミルの森に
身を隠し
食べるものとて朝露ばかり
されど彼らより
人々生まるるなり
 <「ヴァフズルーズニルの歌」45より>

 
ああ、良かった。
人間も生き残っていたんだ。
そして彼らが、新たな人間の祖となったんだ。
 
人間の祖

 
北欧神話はここでおわる。
  
 
 
戦いとたくさんの死が続く内容なので、ケバダチには耐えられず、
そのため挿絵がふざけてます。
北欧神話好きな人にはむかつく挿絵かもしれません。お詫びします。

北欧神話ーロキ

パペガに出てくるわけじゃないけど、今まで何度もその名前が出たロキ。
彼を語らずに北欧神話は語れない。
 
パペガで関わることというと、
1502115.png
スヴァジルファリと交わって
m2_23.png
スレイプニルを産んだお母さんがロキ。

172.png
グラニのおばあちゃんになる。
 
m2_4.png
フェンリルと、
ヨルムンガンド
ヨルムンガンドと、
ヘル
ヘルのお父さんでもあるロキ。
 
それと、
グングニル
グングニルを作らせたのもロキだ。
パペガに出ては来ないが、とても縁のある北欧神話の神だ。
 
 
ロキ
 
巨人族でありアース神族。
巨人ファールヴァウティと巨人ラウヴェイ(またはナール)の息子。
ロキは純血の巨人だが、オーディンと血誓兄弟の契りを結んでいて、アース神族の一員としてアースガルドに住む。
両性具有で変身能力をもつ。
オーディンが主神に対して、ロキはその影ともいわれる存在だけれど、
はじめから悪の存在というわけではない。
彼の知恵はいたずらもあれば悪巧みもある。
けれど危機を救うものでもあった。
(ギリシャ神話のヘルメスにちょっと似てるかな)
 
__ロキは容貌こそりっぱで美しいが、心根はよこしまで、行動はひどく気まぐれだ。彼は他のだれにもまして奸智という知恵があって、何事でもだます。いつもアースたちをはなはだしい困難に陥れるが、彼らを奸計で助けることもしばしばだ。彼の妻はシギュン、彼らの息子はナリまたはナルヴィという。
<「ギュルヴィの惑わし」33章より>

 
ロキはイケメンだったようだね。
ケバダチが描くと、
 
ケバロキ
こんなんだけどw
 
巨人族というのは、人間とそれほど変わらない容姿の者もいたが、奇怪な外見が多い。
途方もなく巨大なもの、複数の頭を持つもの、獣の姿をしたものなど様々だ。
けれど、女には美しい外見のものもいて、しばしば神々の花嫁になる。
ロキがイケメンというのも、両性具有で女の部分をもちあわせているためなのかもしれない。
 
800px-Processed_SAM_loki.jpg
「ロキ」1760、アイスランド写本の挿絵
 
有名なこれは写本の挿絵なので古いもの。
アース神への憎しみが増大し、アースガルドを飛び出してからの姿。
ファフニールの兄(カワウソに変身していた)を殺してしまった川の側に、どの方角からでもアース神が捕らえに来たとわかるような家を作って住みだした。
もってるのは魚の網。
魚を捕らえるための網を編んだんだけれど、その網を参考に編んだ神の網で自分が掴まってしまうんだ。
とてもイケメンに描ける状況じゃないかなw
 
もっと前のロキだと、
 
1024px-Loki_and_Svadilfari_by_Hardy.jpg
「ロキとスヴァジルファリ」1909、D. ハーディ
 
左の男は、アースガルドの城壁造りをかって出た石工に変身した巨人。
馬はスヴァジルファリ。
美馬に興奮し、主人の手綱もふりきって駆けつけようとしているところ。
つまり、先のほうに小さく描かれている美人馬がロキ。
ん〜w
スレイプニルの記事でも触れたが、この時は文字通り身を呈してアース神族のために働いたロキなんだ。
 
アンドヴァリを抑える
アンドヴァリを抑えるオーディンを手助けするロキ 1914、F.フォン・スタッセン
 
これは絵の一部。
ファフニール1で書いた部分の絵で、やはりアースのために動いてるロキ。
ん〜。
美しいってことになってるけど、その性格や行動から美しく描いてもらえることはなさそう。
 
ロキとホズ
「ロキとホズ」1890年頃、大理石、C. クヴァルンストロム
 
前回のヘルのところで触れた、バルドル殺害させるところ。
盲目のヘズ(ホズ)を手助けする優しい神を装う場面だ。
「もうちょっと腕をあげて。そう。うん、いい感じですよ。このまま思いっきり弓を引いてごらんなさい」
とか言ってたんだろうね。
 
ヘズの放った宿り木はバルドルに命中。バルドルは死んだ。
この世の全てのものがバルドルのために泣くなら生き返らせよう。
このヘルが出した条件は、神々によって満たされようとしていた。
しかし、ひとりの女巨人だけは泣くことを拒否した。
女巨人に変身したロキだ。

ロキは、アース神たちの怒りが自分に向けられるのはわかっているので、アースガルドを飛び出した。
妻も息子たちも置いてひとりでだ。
というのも、ロキは妻シギュンにさえ憎しみを覚えるようになっていた。
彼女はバルドルのために涙したし、その死を決定的にした夫ロキの行動と神々の怒りに対しても心配し涙していたからだ。
この頃には、ロキの心はすさんでいたようだ。
 
言葉がうまいので、冗談などでアースガルドで笑いをとることもあったロキ。
いたずらに困らされても、その代償に宝をもたらせたロキをアース神たちは許していた。
けれどいつしか、ロキのアース神への憎しみは膨らんでいた。
そしてバルドルを殺害し、その後、ラグナロクへと巨人達をけしかけていく。
 
神が正義であるのに対して、巨人は悪をになっている。
それは花嫁としてアースガルドに住み、神々の一員となった者でも、時には巨人の悪の心を感じさせる言動がある。
何がきっかけでオーディンと兄弟の杯を交わしたのかわからないけれど、やはりロキは純血の巨人なんだ。
その体に流れてる血は変えられない。
いつかは必ず本性が出る。
そんなことをロキを通して北欧神話は伝えてくる。
 
話は最初の挿絵のところに戻る。
 
バルドルのよみがえりを阻止したロキ。
アースガルドを飛び出して、ファフニールの兄オッタルを殺した川にいた。
そこでサケに変身して潜んでいた。
アース神たちの追跡がすぐ側まできてると知り、網を火の中に投げ込んでいた。
けれど、アース神にはロキ以外にも知恵者はいる。
灰となった網をみつけ、それと同じように網を作り上げ、それでロキを捕獲するんだ。
何だかんだと逃げ回ったロキだけれど、追い込まれ、トールによって掴まってしまう。
尻尾のあたりをぐいっと掴まれたら、どんなにもがいても逃げられなかったようだ。
 
ロキは、とある洞窟につれて行かれた。
3つの平らな岩には、とがった角で穴がそれぞれ1つずつ開けられた。
そこにロキが縛り付けられるわけだが。
その前に、ロキの息子たち、ヴァーリとナリ(ナルヴィ)が連れてこられた。
 
ロキを縛る

 
・・・・・兄に弟を殺させ、その腸で親を縛る・・・
残酷すぎて、すごく短い文章なのに、最初に読んだ時はまったく理解できなかったよ。
神々を怒らせるとどんな罰が待っているのか。
昔話にはしつけも含まれるとはいうけれど、北欧神話のそれは苛烈極まりないとケバダチは思った;;
 
ロキへの刑はそれだけじゃ終わらない。
スカジが毒の刑をプラスした。
 
フレイの父ニョルズ(ニョルド)の後妻に、スカジ(スカディ)という巨人がいる。
巨人だけれど結婚によりアース神族の仲間になった。
スキーと狩猟の神様だ。
麗しの花嫁といわれる美女なんだが、性格は酷薄。
彼らは恋して夫婦になったわけではない。
色々あってのスカジへの弁償として、足だけでアース神を夫に選んで良し、となったからだ。
スカジは美しいと評判のバルドルを狙っていた。
美しい神なら足だって美しいはずだ。
これこそ一番美しいと選んだ足は、バルドルではなく、おっさんのニョルズだったw
二人はがまんして夫婦になったけれど、スカジはスキーの神といわれるだけあって山が好き。
ニョルズは「ニョルズの海」と歌われる海運業や漁業の神。
海の神と山の神だ。
結局、別居状態となる。
(スカジはオーディンと再婚してノルウェー王家の始祖と記されるサガもある)
 
別居とはいえ、大切な場面にはちゃんと妻としてそばにいる。
それでこのロキへの刑が執行される時にも居合わせてるんだね。
  
ロキへの刑罰にスカジが添えた。
 
スカジ

 
これが巨人の血。
ニョルズと結婚してアース神族となったわけだが、残忍な血が騒いだという設定なんだろう。
(スカジ Skaði は「害、死」を意味する男性名詞と同形)
毒ヘビも自らとってきて、ロキの縛られてる岩の上にのびる木の枝に縛り付け、
その毒がロキの顔にしたたるようにしたんだ。
 
実はスカジ、ロキとベッドを共にしたことがある。
研究者は巨人の血による酷薄とするけれど、女の恐い面が出てるだけのようにケバダチは感じてる。
ロキはアースガルドを飛び出す前に、アース神たちの宴会でさんざん悪口を言った。(エッダ「ロキの口論」)
スカジはロキをベッドに誘い、どれだけご機嫌だったかをばらされた。
他に不倫をばらされた神もいるんだけれど、スカジはこの時とばかりに復讐したんじゃないかな。
恐いよ。女ってw

岩に縛られるロキ
「ロキ」1870年頃、D. ペンローズ
 
それでロキの妻シギュンは、ロキの側に寄り添い、洗い桶でその毒を受け止め、
ロキの顔に落ちないようにするんだ。
 
Loki,_by_Mårten_Eskil_Winge_1890
「ロキとよりそうシギュン」1863、M. E. ヴィンギャ
 
でも毒がたまれば捨てに行かなくちゃならない。
その間は、ロキの顔に毒がしたたりおちる。
すると彼は猛烈にもがくので、大地が震える。これを、お前たちは地震と呼んでいるのだ。
 <「ギュルヴィの惑わし」50章より>

 
ロキが毒に苦しみもがくのが地震だったのね。
311とその後しばらく、地震が頻発して恐かったよね。
ロキ、かなり長いこと毒を浴び続けてたのかなw
シギュンったら、毒を捨てに行って、知り合いにあって話し込んでたのかしらw
 
1024px-Lokes_straff_ida_matton_1923_stockholms_stadshus.jpg
「ロキの罰」1923、I. マトーン、ストックホルム市庁舎
  
こうしてロキはラグナロクまで縛られたままとなった。
ロキの絵は色々あるんだけど、この罰を受けている絵や像は裸だね。
裸で刑を受けたんだろうか。
寒い北欧地域で裸のままは辛そうだ。
しかもラグナロクは大いなる冬から始まる。
太陽が照らない、夏が来ない冬が3度続くんだ。
よく凍死しなかったもんだ。
  
そのラグナロクは次に。
 
 

北欧神話ーヘルとバルドル

イベ中ですが、諸事情によりまとめる時間ができたので、北欧神話の続きです。
アーティさん、復旧がんばってください!!! 復旧しましたね♪)
 

新階層20階を経て、ヘルへイムに辿り着く。
そこにヘルが待っている。
 
最後のボスらしく、一度倒れたからっておわらない。
変態する!
どんな攻撃してきたとかって、う〜ん。
電撃ビリリのようなのとか、かまいたちのようなのとか、あった気がする。
赤い色や黒っぽいのも見た記憶があるので、様々な属性の攻撃をしてきてたのかも。
ん〜。どうなんでしょうね^^;
とにかく、衝撃的で、強かった。
間違いなく一番強い相手だと思う。
 
ヘル
はじめの姿

 
 
ヘル
 
北欧神話の世界の始まりは、極寒の地「ニヴルヘイム(ニフルヘイム)」と灼熱の地「ムスペルスヘイム」と、
その間にある大きな穴(ギンヌンガガプ)しかなかった。
その原初からあるニヴルヘイムの地下にヘルへイム(ニヴルヘル、ヘル)がある。
そこで死者を支配する者として君臨する女巨人ヘル。
 
ヘルのつづりは「Hel」古ノルド語も「Hel」
英語の「Hell」と語源は一緒だと、これは簡単に想像つくよね。
(「地獄」ってスウェーデン語もノルウェー語も「Hell」だけどオランダ語は「Hel」とまったく同一。古北欧ではヘル=地獄の名称、あるいは地獄そのものを指したそうだ)
 
彼女は幼少の頃、フェンリル兄さん、ヨルムンガンド兄さんと共に、
アース神たちによって母親から引き離された。
しかも、将来神々に禍をきたすということから、ヨルムンガンド兄さんは大海に放り投げられ、
ヘルちゃんも冥界の地、ニヴルヘイムの地下に投げられたんだ。
 
__オーディンはヘルをニヴルヘイムに投げ込み、9つの世界を支配する力を彼女に与えて、彼女のところに送られるすべての者たちに住居を割り当てることができるようにした。__
 <「ギュルヴィの惑わし」34章より>

 
「9つの世界」というのは、「巫女の予言」によると、北欧神話における全世界にあたる。
「9」という数字自体が神聖なものなので、
「9つの世界から成り立ってる神聖なる我らと神の世界」という感じなんだろう。
 
1.アース神の国_アースガルズ
2.ヴァン神族の国_ヴァナヘイム
3.妖精の国_アールヴへイム
4.灼熱の世界_ムスペルズへイム
5.人間界_ミズガルズ
6.巨人の国_ヨトゥンヘイム
7.死者の国_ヘルへイム
8.暗黒妖精(またはドヴェルグ)の国_スヴァルトアールヴヘイム
9.極寒の世界_ニヴルヘイム
となっている。
 
ヘルにはこれらの国々の支配力を与えられた、というのは、死者の支配に限ることのようだ。
「藁の上の死」いわゆる「不名誉な死」と言われる病死や老衰を迎えた者たちは、いやがおうでも死者の国へ行き、そこでヘルの支配下につくことになる。
ヴァルキュリャに選ばれた「偉大な死」を迎えられればヴァルハラに行けるが、その他は皆ヘルへイムに行くしかないようにもみえる。が、性別や階級によって死後の支配者は別れているから、ヘルへイムが大混雑と心配しなくてもいい。
 
死後の支配
女性はフレイヤのところへ行く(行ける)ようなんだ。
ただそこには、選ばれる条件があるようで、どんな条件があるかまでは調べられてない。なので( )にした。
 
 
死後どこへ行くのか。
アース神の信仰があった頃は、大体上の図のように考えられていた。
巨人族のもとへ行くより、できればアース神のもとへと願うのが普通の感覚だろう。
それは神も妖精も同じように願っただろう。
ヘルは9つの世界を支配するわけだから、巨人だろうが神だろうが関係なく「不名誉な死」をとげた者を自分の配下に置く。
アース神だってヘルへイム行きになるんだ。
アース神は老いないリンゴがあって、それによって老衰はまぬがれている。
けれど不慮の死がないわけじゃない。
神だろうが巨人だろうがドヴェルグだろうが、
「ヘルの元へ行く」=死
という会話になるぐらいなので、ヘルは会いたくない女性の第1位に選ばれていたのかもしれないw
 
__彼女の館はエーリューズニル(雨で濡れたもの)、皿はフングル(空腹)、ナイフはスルト(飢え)、下男はガングラティ(動作の遅い男)、下女はガングロト(動作の遅い女)、入口の敷居はファッランダ・フォラズ(けつまづく危険な所)、ベッドはケル(病床)、天蓋はブリーキャンダ・ベル(輝く災い)と呼ばれている。彼女は半身が青黒くて、残りの半身は普通の肌色をしている。だから彼女は容易に見分けられるし、相当にいかめしく、荒々しい顔つきをしている。__
 <「ギュルヴィの惑わし」34章より>

 
ヘルは半分青黒い。
腐ってるという翻訳もある。
パペガのヘルは、ちゃんと半分青黒くデザインされてる。
パペガでの顔はそんな恐そうに見えないけど、エッダによれば険しい顔のようだ。
居心地の悪そうな館にいるんだから、弱そうな顔じゃいられないよね。
それで、こんな絵になる。
 
800px-Hermod_before_Hela.jpg
ヘルモーズとヘル 1909、J. C. ドールマン
 
後ろの亡者の群れが何とも不気味だ。
エッダの文章から想像される、いかめしい顔つきだよ。
 
1024px-Lokis_Gezücht  
1905、E. ドープラー

これは3兄妹の絵だ。
フェンリルとヨルムンガンドと一緒。
奥には母親巨人の姿もみられるし、アース神たちに捕らえられる前だね。
 
今まで北欧神話をまとめてきて、現代絵画はほとんど載せてないんだけど、
これは秀逸! と思ったイラストがあるので載せておきたい。
「Norse Mythology」(http://www.viking-mythology.com/)で見つけたもの。

 
Hel.jpg
「ヘル」 ノルウェー語wikiから借用

残念ながら誰の絵なのかケバダチには見つけられなかった。
半分腐ってるどころか、朽ち落ちてしまって骨だ。
極端に見えるけれど、時間の経過を加味すればこれもありだろう。
時間経過を無視しても、この極端な対比は生と死を的確に表現しているよね。
さらにケバダチがいいと思ったのは肉のあるもう半身の描写。
その表情も強そうでいいし、肉体の若々しさもいいと思う。
胸の膨らみも処女のようでいい。
ヘルは処女だったと思うのよ。
冷たい死者の世界に君臨するのに、中年以降の肉体じゃ環境に負けそうだし、まして経産婦のような肉体は似つかわしくない。
ケバダチはヘルに若さを求めたいの。
というのは…
もしかしたら、ヘルは恋をしたのかもしれない、とケバダチは思っているから。
バルドルにね。
 
 
 
バルドル
balder-portrait.jpg
「Balder」1900、J. ライヒ
 
バルドル(バルデル、バルドゥル)はアース神。
オーディンと正妻フリッグとの子。
ヘルはこのバルドルに恋心を抱いたんじゃないか? とケバダチはひっそりと思っている。
 
__オーディンのもう1人の息子がバルドルで、彼についてはよいことばかり語られている。彼は最もすぐれた神で、誰一人彼をたたえない者はない。容貌が、それは美しく、輝いているので、彼から光が発しているほどだ。(略)これから、お前は、彼の髪と身体の美しさを推して知るべきだ。__
 <「ギュルヴィの惑わし」22章より>

 
ヘイムッダルもアース神で一番美しいという文章があったけれど、バルドルも輝くほどの美しさをもっていたという。
主神の息子なのだから、美の貴公子といったところ。
白いまつげと輝く美貌。
雄弁でいつくしみ深い。
誰からも愛された王子様のような存在。
優しすぎて優柔不断のところもあったようだが、それもご愛敬かな。
神様だって完璧はいない、ところがいいよね。
(これは動詞の読み方で正反対の意味にも解釈できる。完璧なる神とする文章もあるけれど、それを否定するようなエッダもいくつかあって異論がつきぬところのようだ。ケバダチは優柔不断というマイナス面のある神とする説を支持)
 
妻にナンナ。
フォルセティという息子は正義の神で、父の優柔不断をカバーするかのように優れた審判者だ。
バルドルの館ブレイザブリクはアースガルドの中でも天上にあり、不浄なものの入ることは許されない
天国と地獄じゃないけれど、死者の世界が地下深いのに対して、アースは標高高い所にあるし、その中でもバルドルの館は一段と高い所にあった。
それだけ聖なる存在としてバルドルがいる。
 
バルドル像
「バルドル」1840、大理石、B. フォーゲルバーグ

そんなバルドルが神として何をしたかはわからない。
神話に残されてないようなんだ。
研究者によると「光の神?」「植物の神?」という感じ。
わかってない。
けれどバルドルが有名なのは、美しいから。ではなく、彼の死がラグナロクへの引き金となったから。
彼は、ロキの策略によってヤドリギの若木がささり死んでしまう。
上の図をみて。
「戦死」じゃない。「戦死者以外」だ。
「海難事故死」でもない。
つまり「その他」でヘルのもとへ行くんだ。
 
アースの神々は嘆き悲しんだ。
元々、バルドル自身が命が危ぶまれる不吉な夢を見た時から、神々はどうにか防ごうとしていた。
相談の上、あらゆる危険からの安全保障を求めることが決められた。
父のオーディンは「バルドルの夢=予知夢」の真実を知るため、ヘルへイムにまで足を運んで事情を聞き出そうとする。
スレイプニルに乗ってニヴルヘイムまでくると、胸の辺りを血で染めたガルムが吠えてくる。(死者を食べたからだろう)
それを乗り越えヘルの館にたどりつく。
そして死者を目覚めさせる魔法の歌を歌うと、ひとりの女が起き上がり死者の言葉を語る。
 
ここにはバルドルのためにかもされた蜜酒が、輝く飲物があり、楯がそれをおおうています。アース神の子らは絶望しています。やむなく語りました。ここで口をつぐむことにしましょう。
 <「バルドルの夢」7章>

 
「バルドルのためにかもされた蜜酒」というのだから、バルドルを迎える準備をしているということだ。
そしてアースの神々は絶望するという予言だね。
女はすぐに口をつぐもうとするが、オーディンは何とか情報を得ようとする。
すると、バルドルの殺し手はヘズ(ホズ)だという。
ヘズもまたオーディンの息子だ。
バルドルとは腹違いの兄弟。
 
恐ろしい予言に肩を落として戻ったオーディン。
しかしフリッグが9つの世界中を旅して、ありとあらゆるものから(火と水、鉄とその他の金属、岩石、大地、樹木、病、鳥、毒、蛇などから)息子を傷つけないという誓いを立ててもらってきたと知る。
母は強し! だね。
避けられない運命のようだと落ち込んでる父親とは違うよw
 
フリッグのとりつけた誓いによって、バルドルを傷つけるものはなくなったはずだ。
本当に不死身になったかどうか確かめることにして、バルドルめがけて石を投げつけることにした。
すると、バルドルは傷つかなかった。
力一杯なげたり、槍を投げたりもしたが、バルドルを傷つけるものはない。
剣をふりかざしたものもいたが、平気だ。
何を投げても、何をしても、バルドルは微笑んで立っていられた。
このことにアースの神々は大いに喜んだ。
ロキを除いて。
 
ロキは老女に変身してフリッグに尋ねる。
すると、宿り木からは誓いをもらってないことを聞き出した。
弱々しい植物がバルドルを傷つける心配はないだろうと思ったフリッグは、宿り木だけは除外してたんだ。
そこでロキは宿り木を手にしてヘズに近づく。
バルドルへ何かを投げつけるのは、アース神たちの安心ゲームのようになっていた。
ヘズは盲目だったのでそこに参加できないでいる。
ロキは言葉巧みにヘズに宿り木を握らせ、手助けするようなふりで狙いを定めさせ、投げつけさせた。
それはバルドルの胸を貫いた。
バルドルはたちまち倒れ、息絶えた。
 
balder-death-painting.jpg
「バルドルの死」1817、E. W. エッカースペア
中央がオーディン。隣にトール。左に投げたヘズとその後ろにロキ。
 
バルドルが倒れたとき、すべてのアースたちは口がきけなくなり、彼を抱きおこす手もなえたそうだ。
互いに顔をみあわせ、これをやった者へ皆の思いは向けられたが、誰も復讐することはできなかった。
そこはとても神聖な場所だったから。
(血を流すことを禁じられていた)
それに、口をきこうとしたとき、先に涙が出ていて、誰もその悲しみを語ることができなかった。
その状況がよく現れてる絵だよね。
 
呆然とたたずんでいた神々もやがて正気に返る。
息子の死を悲しむフリッグの哀願にこたえ、ヘルモーズ(オーディンの子。バルドルと腹違いの兄弟)がバルドルの身代金を差し出すためにヘルへイムへ派遣された。
身代金と引き替えに、バルドルを生き返らせてほしいということだ。
母親の嘆きは当然として、アース神たちにとってもバルドルがいないのは光がないように思えたんだろう。
できることなら戻ってきてほしい。
神たちの願いを背負ってヘルモーズはヘルへイムへ向かう。
その道はとても険しくて困難だ。
オーディンにスレイプニルを貸し出してもらって向かう。
スレイプニルをもってしても9夜かかる道。
そしていよいよ、ヘルの館に入っていくと、バルドルが高座に腰掛けているのが見えた
 
バルドル写本
「バルドル返還を求めるヘルモーズ」1760、オウーラヴル・ブリニュウルフソンの写本挿絵
ヘルは顔が青く描かれている。その奥にいるのがバルドル

 
わたくしがヘルが恋したかもしれない、と思ったのはこの「高座に腰掛けている」というのがきっかけ。
高座だよ。
一般席じゃないんだ。
ヘルのもとへ来たのなら、神も巨人も人間も同じだ。
地獄の沙汰も金次第なんて言葉もあるけれど、バルドルが大金を持ってヘルへイムに行ったわけじゃない。
それなのに、そこで君臨するヘルと同等の席が設けられている。
ちょっと引っ掛からない?

バルドルを生き返らせる条件としてヘルが提示したのは、莫大な身代金ではなかった。
「もしも世界中のものが、生きているものも死んでいるものも、彼のために涙を流したならば、彼をアースたちのところに帰らせてやろう。だが、もしも誰かが反対したり涙を流そうとしなかったならば、ヘルのもとに留まるらせる」
バルドルの死によっていかに多くの涙がアースで流されているかをヘルモーズはヘルに話した。
それでヘルはこんな条件を出したんだ。
とても難しいことだよね。
お金で解決するほうが簡単だろう。
バルドルを離す気などヘルにはない。そう思える。
 
ヘルのもとへ来る死者は病死や老衰による死者が多い。
魅力的な外見とはいえないよね。
一方バルドルは、死ぬ寸前まで、朗らかに笑う健康な若者だった。
しかもアースでもっとも美しい神だ。
心根も顔に出る。
優柔不断なぐらいに優しければ、ただ美しいだけでなく惹きつける人相だっただろう。
そんなバルドルを迎え入れたヘル。
ものすごい衝撃を味わったんじゃないだろうかな。
こんなに美しい者が自分の館に来るなんて、想像したこともないだろう。
死者の館から離れたことのないヘルが、恋したことなんてあるだろうか。
やってきた死者を好きになるなんてなかったと思う。
けれど、美しいバルドルが現れた。
衝撃的だったと思うよ。
それで、ヘルはバルドルに一目惚れをし、高座を与えたんじゃないかと。。。
 
ただ、残念なことに、バルドルの妻ナンナもそこにいた。
夫の死を嘆き悲しみ、胸が張り裂けて死んでしまったんだ。
それで、バルドルと共に船葬されていて、結果ヘルのもとに来ていた。
ヘルはバルドルに恋したかもしれない。
けれどそれは実らぬ恋で、告白することもなく、失恋も決まっていた。とケバダチは思うのです。
 
ヘルは死者の国の王としているだけじゃなかった。
迎え入れた死者の審判をしてふさわしい部屋を割り振ってた。
閻魔大王のような役割なのかな。
幼少時にそこに投げ込まれた時からやってきた仕事だ。
相応に公平だっただろう。
バルドルの死は早すぎだ。
死因もバルドルに非があるわけじゃない。
ヘルモーズの申し出を受け入れても悪くはないだろう。
けれど、条件は厳しすぎでバルドルを離す気がないとしか思えない。
理由として、惚れた相手、というだけじゃない。
ナンナと離ればなれにしないためでもあったんじゃないかと思う。
 
ヘルモーズはアースを代表してバルドルの返還を申し出にきた。
ナンナのことは触れていない。
もし、身代金で返してしまったら、夫婦はまた別れ別れになってしまう。
愛しい人を側において、その顔を見ていたいという欲もあったと思うが、
悲しみの余り死んでしまうほどの愛情を愛しい人に注いでくれるナンナと、バルドルを引き離してはいけないと考えたんじゃないかと思う。
恋敵という気持ちよりも、好きな人を大事にしてくれる人という目でナンナを見たんじゃないかな。
 
と長く書いてしまったけれど、これはあくまでもケバダチの新説。
(珍説かなw)
巨人だろうがなんだろうが、この世に生を受けたんだから、恋の1度ぐらいさせてあげてもいいじゃない。
ねぇ。そう思わない?
 
 
さて、結果。
ヘルモーズから返還の条件をきいたアース神たちは、全世界に「バルドルのために涙を流すよう」使者を送った。
人間も生物も大地も岩石も木もあらゆる金属も。
泣いた。
けれど、バルドルはアースには戻れなかった。
泣くことを拒否した女巨人がひとりいたからだ。
ロキが変身してたんだけどね。
 
バルドルは、ナンナと夫婦でヘルへイムに長く住むことになった。
そしてラグナロク後。
新たな大地が生まれ、生き残ったわずかな者でそこに新しい世界を作っていく。
ここに、バルドルはヘズ(ヴァーリ<彼も腹違いの兄弟w>によって殺害された)と手を携えてヘルへイムから復活して、世界の新生にたずさわる。
ヘルへイムにいたから猛火を避けられたんで、結果オーライって感じかなw
 
 
ヘルに関する神話というのはこれぐらいなんだ。
神々に甚大なる災いをもたらすと予言されていた3兄妹。
フェンリルがオーディンを、ヨルムンガンドがトールを亡き者にしたラグナロクで、ヘルは何もしていない。
(もしかしたら船を作り上げているかもしれないけれど…)
彼女は死者の国を統括していただけだろう。
地上すべてが焼き尽くされても、極寒の地の地下深いヘルへイムまで炎は届かなかったということだし、
彼女はそこで毎日粛々と、やってくる死者達を審判し部屋を割り当てていたんだろう。
最初オーディンがヘルをニヴルヘイムに投げつけたを読んだ時、ひどい神様だと思ったけれど、これは悪くなかったのかと今は思える。
ただ投げ込まれただけなら、憎悪をふくらませるだけだったかもしれない。
ヘルに対しては権限を与え、仕事を与えていたのが良かったのかな。
人間、仕事とそれに見合う報酬(ヘルの場合支配権)が与えられたら、よこしまな考えなど浮かばない、ということなんだろうね。
(人間じゃなくて巨人だけどね)
 
 
さてさて、スプレンドルミサスの北欧神話モンスターはこれで終わった。
あとは、ラグナロクとロキをまとめようと思う。
あと2回ぐらいで終わる予定。。。
 
 

北欧神話ーヨルムンガンド vs トール

ヨルムンガンド
 
とうとうきました20階層のヨルムンガンド。
スクショはね、訪れた2回ともあきらめたの。
大きすぎて><
画面に入りきれないの。
どこをどう切り取ったらいいかわからないと思ったし、弱々のわたくしは「とにかく死なない」使命がございました。
このヨルムンガンドに関しては、フレさんの動画から切り取らせていただきました。(無許可だけどw)
 
ヨルムンガンド
元の動画はこちら「ちるちる備忘録
 
 
パペットの大きさからも巨大なのがわかるよね。

ヨルムンガンド(ミズガルズ蛇、ミッドガルド大蛇、世界蛇)はアース神族に所属するロキと、巨人族のアングルボザとの間の子。
フェンリル、ヘルと共にラグナロクでアース神族をおびやかす3兄妹の真ん中。♂。
アース神族の仲間になってるロキだけど、本来彼は純然たる巨人族。
なので、ヨルムンガンドはいわゆる純血の巨人なんだ。
 
フェンリルの記事でも書いたが、この3兄妹からはなはだしい禍いと不幸がおこるだろうという予言により、アース神たちによってヨトゥンヘイムから捕らえられ、ヨルムンガンドは大地を取りまく深淵の海に投げ入れられたんだ。
まだ子どものうちにだ。
驚いたねぇ。蛇なら海に投げてもいいの?
鳥ならまだひよこちゃんの状態だよ。
ペンギンのひなでもいいよ。
禍の種になると予言されたからって、ひなを深〜い海に投げ入れるって、普通の感覚じゃできないよねぇ。
それができるのが神ゆえなのね。
アース神族はそうしたんだ。
 
でも彼は死ななかった。
最終的にはミズガルズ(人間の世界)を含む大地を一回りして、自分の尻尾を咥えるほどに成長した。
それでミズガルズ蛇とも言われる。
その姿はまるで大地を締めつけているようだったそうだ。
古ノルド語でJörmungandrなんだけど、神話の地元北欧ではMidgårdsormen、Miðgarðsormur、Midgardsormenという感じで、ヨルムンガンドというよりミズガルズ蛇の呼称がメジャー。
次に上げたブローチは古いものだけど今でもヨルムンガンドのブローチは色々ある。
それを検索するのにはミズガルズ蛇で検索したほうがヒットしやすい。
911を日本では「ナインイレブン」なんて言い方をするけれど、米国では?になってセプテンバーイレブンと言わないと通じないのに似ているかも。

 
ヨルムンブローチ
7世紀、ヨルムンガンドをデザインしたブローチ

 
ラグナロクでは兄のフェンリルと共に、他の巨人も引き連れアースガルドに攻め入っていく。
海からその巨体を浮上させ大地を這っていくんだ。
当然、大津波がおこる。
彼の起こす大津波で地上は洗われ、ミズガルズの人間の多くがその波に呑まれた。
また、空と大地は彼の吐く毒に覆われたという。
ヨルムンガンドの相手はトールだ。
戦いの末、ミョルニルの槌によって頭を砕かれて死ぬ。
が、トールは吐かれた毒によって、9歩退いたところで息絶えて大地に倒れる。
 
ということで、最後はトールと相打ちでやられてしまったわけだが、実はその前に2度ほど勝負していた。
 
 
トール
 
kvesv0428s.jpg
「トール神」ユールゴーデン橋、ストックホルム、スウェーデン

トール(ソール。言語の読みとしてはトールよりソールの方が近いがソールという神が別にいるので日本ではトールと表記されることが多い)はアース神。
雷神。天候、農耕の神。神々と人間の守護者。奴隷達の死後の支配者。
赤ヒゲが特徴の大男。大食漢。
乱暴者であり正直者。激しやすいが弱い人間には優しい。
父はオーディン。母は大地の女神フィヨルギュン(ヨルズ)。
(ヨルズってオーディンの娘なんだよね。ヴァン神族の近親婚を否定するくせにオーディンこそむにゃむにゃむにゃ)
妻は金髪が自慢のシヴとヤールンサクサがいる。
それぞれと息子をもうけていて、息子たちはラグナロクを生き延び、父の残したミョルニルを手に新世界を作っていく。
 
ミョルニルはドヴェルグの作った魔法の槌で(グリンブルスティと神々の宝の誕生参照)、創造力と破壊力の象徴でもある。
同時に、豊穣、再生、幸運の源だった。
ヴァイキング時代になると農民の間で厚い信仰を得、結婚式に斧や槌が花嫁への神聖な贈り物となった。
アイスランドやノルウェーで見られるトールステンという姓は、このトール(農耕神)にちなんで名付けたそうだ。
アースの3大神といえばオーディン、トール、フレイなのだが、その中心にトールを置かれた絵やタペストリーなど多数残っている。
信仰の強さの現れだろう。
 
800px-Thor_statue_reproduction.jpg
「トール神」青銅像、11世紀、アイスランド

800px-Three_kings_or_three_gods.jpg
「3大神のタペストリー」12世紀、スコーグ教会、スウェーデン
左から槍(?)をもったオーディン、中央にミョルニルをもったトール、稲穂をもったフレイが描かれている

  
まぁ、トールは北欧神話でも有名な神なので、ちょっとググれば色々出てくるんでそちらを参照。
彼はアース神だけど、巨人族に似ていたんだ。
外見も性格も。
アース神は一応知的で美しい、とされている。
トールはでかいし、力自慢だし、大食らいだし、怒りやすいし、単純だし、目は燃えるような目だったそうだし・・・w
とにかくアース神全員の力を足しても、トールの方が強いと言われていた。
それで巨人族にとって、トールがもっとも脅威なアース神だったんだ。
もとから脅威だったのに、ミョルニルの槌を手にしてしまった。
ガクブルだっただろうな巨人族。
ミョルニル自体、狙い定めたら必ず仕留める魔法の武器だし、その力を増幅するものをトールはもっていた。
鉄の手袋と力帯だ。
力帯を腹にしめるとトール自身の力が倍増したそうだし、鉄の手袋をはめると、ミョルニルをがっちり握り締めることができた。
ミョルニルは少し柄が短いという短所があって、素手では握りづらかった。それを鉄の手袋が補ってくれたようだ。
これによってミョルニルの威力も増し、最強のアース神ができあがった。
 
 
ヨルムンガンドとの第1回戦
 
東の海岸線に巨人たちの住む世界ヨトゥンヘイムがある。
他の神は近づこうとしないこのヨトゥンヘイムへ、トールは何度か巨人退治に訪れている。
この時もミズガルズに寄り、さらに東方のヨトゥンヘイムへ。
途中で連れることになった人間の少年と、ロキと一緒に3人で足を延ばした。
 
ある城を訪れた。とても大きな城だ。
彼らがそのてっぺんまで見上げる前に、うなじが背にくっついた。ほどの大きさだw
その城の主はウートガルザ(ウトガルド)=ロキという名だった。(ロキとは別人)
城主がいうには、この城では何か自慢できる技芸をもってなければ留まれないという。
それでロキやミズガルズからお供をしている少年も、そこで勝負するけれど、負けてしまう。
トールも勝負するけれど、負けてしまう。
実はウートガルザ=ロキは、その前に変身してトールの前に現れていた。
トールの力をいやというほど思い知っていて城に寄らせたくはなかったが来てしまったので、幻影によってトール達を打ち負かし追い出そうとしたんだ。
ウトガルザ
 
ロキが早食いで競争した相手は「野火」だった。
それで骨も桶も焼き尽くし、ロキは負けてしまった。
トールの共をした少年が走った相手は、ウートガルザ=ロキの「思考」だった。
思考のスピードにはどんなアスリートも勝てやしない。
トールが酒飲みをした角杯の端は、海の中に入っていたという。
悔しさもあって、本気で飲み続けたトールだったけれど、海の水を飲んでいたのなら、底をつくなんて到底無理。
しかし、それが明らかにされたのは一夜明けてから。
幻影と知らぬまま、真剣勝負で歯が立たないトールたち。
こんな屈辱はなかった。
どうにか勝てるものをと、自慢の「力勝負」を申し出る。
その1つが巨大な猫を持ち上げるというものだった。
 
ウトガルザ2

 
800px-Thor_lifts_the_cat.jpg
「ウトガルド=ロキの幻影による猫を持ち上げるトール」1872

 
その巨大猫はヨルムンガンドだった。
その体全体を持ち上げるなんて、誰にだってできないことだ。
幻影の猫でもそうだ。
トールは片足が大地から離れたところまでしか持ち上げられなかった。
煮え湯を飲まされたトール。
 
この時のヨルムンガンドに敵意はなかったのか。
それとも、何か石ころでもお腹が踏んでるのか? そう感じるぐらいだったのか。
トールもヨルムンガンドも、宿敵と対峙してると気付かぬまま勝負していて、トールは負けていたんだ。
 
ヨルムンガンドとの第2回戦
 
幻影相手に闘っていたと知ったトールの怒りは収まらない。
特に、ミズガルズの大蛇と一騎打ちしていたことに決着をつけなければと、
帰宅してもあわただしく旅支度をして、今度は若者に変装してひとりで出掛けた。
 
ミズガルズ蛇なので、ミズガルズを探し歩き、ヒュミルという巨人の家に泊まった。
そして翌朝、ヒュミルの漁を手伝うといいだす。
若者に変装していたので、ヒュミルは若僧に何ができるとバカにしていたが、
トールは持ち前の筋力で、船を漕ぐにも巨人が驚くようなパワーをみせていく。
 
やがて、これより沖はヨルムンガンドがいて危険な地域だからとヒュミルは止めるが、トールは好都合とさらに漕いでいく。
ヒュミルは若僧(トール)があまりにも強気でいるに対し、この頃にはすっかり怖じ気づいていた。
トールは構わず、ヒュミルの飼っている中でもっとも大きな牛の首を引き抜いてきていた。
それを餌に釣りを始めた。
そして思惑どおり、その餌にヨルムンガンドがくらいついた。
 
トールの釣り
 
ヒュミルはあまりにも大きなヨルムンガンドに恐れおののいた。
その眼が睨んだのか。
その毒気を吹き付けられたのか。
ヒュミルは蛇を見、海水が船の中に入ったり、出たりするのを見ているうち、真っ青になっていく。
トールは踏ん張り、釣り紐、いや釣り綱だね。綱をどんどん引いていき、
よしここぞと、ミョルニルに手をかけた。
そしてそれを振り上げて、ヨルムンガンドの頭を打ち砕こうとした。
その瞬間、
ヒュミルはナイフを手探りで掴み、トールの釣り糸(綱だよね)を切った。
蛇は海中へ沈んでいった。
トールはそれでもミョルニルを投げつけたそうだが、さすがに海中では届かなかっただろう。
 
恐怖のあまりチャンスを切ったヒュミルの横面に、トールは拳を食らわせた。
ヒュミルは船縁ごしに飛んで、足の裏が見えた。
トールはそのまま岸まで歩いて戻った。
(相当な沖まできてるはずだけど、海底に足がついてるんだから、それもできるんだろうww)
 
320px-Jormungandr.jpg
牛の頭に食らいつこうとしているヨルムンガンド 17世紀の写本から
 
thor-mariatorget-620x620.jpg
「ヨルムンガンドと対峙するトールの噴水」マリアトーリア公園、ストックホルム、スウェーデン
今まさに、ミョルニルで頭を打ち付けようとする瞬間だ
海の死闘を噴水で表現するなんて、なかなかいい像だよね

 
ということで、トールとヨルムンガンド。
 
第1回戦:ヨルムンガンド○ トール×
第2回戦:ヨルムンガンド× トール○
 
といった感じだね。
そして決戦は、ともに倒れたんだから、互角の相手だった、ということだろう。
 
 
さてさて、次はいよいよヘルへイムのヘルだ。
秋のうちにまとめも終わりそうだし、最後、がんばろー!
 
 

 

北欧神話ーオーディンの箴言

さて、フギンとムニンの流れで、オーディンの箴言をメモ。
 
オーディンがフギンよりムニンを心配した。
というのは、「高き者の言葉」からもオーディンがいかに分別を大事にしたかが書かれている。
フギンは「心」や「思考」、ムニンは「記憶」や「識別の力」だ。
「記憶」と「識別の力」というのは「分別」と解釈できる。
 
「高き者の言葉」というのはハヴァマールHávamálで、「オーディンの箴言」や「オーディンの訓言」などの邦題もある。
現代にも通用するものがあるし、その中の女性観にケバダチはちょっと腹を立てもしたんだけどねw
フギンよりもムニンを心配したオーディンの、箴言を書き留めようと思う。
(「しんげん」て読むんだね。ケバダチは読めなかったよ;; 日本語も難し〜)
 
 
オーディンの箴言
 
中にはいる前に、すべてのドアに気をくばっておけ。ふりかえって注意しておけ。敵が中のどの席に座っているかしれないから。
 
書き出しから緊張を強いる「オーディンの箴言(高き者の言葉)」。
ヴァイキング時代の名言・格言集、といった感じ。
今の時代にも通用するものもあるし、いや、そうじゃないでしょ、というのもある。
上に立つ者の視点なので、管理職や起業しようとか思ってる人には役立つ言葉でもあるのかな。
地元北欧では普通に読まれるものだそうだ。
(日本のビジネスマンが「葉隠」や「武士道」を読む感覚に近いかも)
その時代の人々を知る資料でもあるし、今でも通用する部分もあることからか、
古エッダの中で、評価の高い歌だ。
まぁそれなりに面白いので、全文一読も悪くないですよ。
(わたくしの持つ翻訳でも19ページだけ)
 
中は、
・客と主
・賢い者と愚か者
・男と女
・ロッドファーヴニルへの忠告
・ルーン(ルーネ)のこと
といった内容。
 
その一部を、ケバダチ感性で抜粋。( )内数字は章。
 
客と主
 
ひろく旅をし、処々方々をめぐった者だけが、人々は誰も、分別を舵に世を渡っていることがわかる。が、その者こそ分別をそなえた知恵者だ。(18)
 
見聞を広めろ。ということだね。
オーディンはあちこち旅をしているから、分別のある知恵者なんだろう。

もって出掛けるのに、すぐれた分別にまさる荷物はない。これは、見知らぬ国では、財産より役に立つように思う。これは、みじめな者を守る鎧だ。(10)
 
貧乏旅行でも分別さえもっていれば、大名旅行よりもいい。ということかな。
その昔は宿などなくて、普通の家に泊まらせてもらうのだから、そこで気持ちよく過ごすためのコツは必要だっただろう。
 
己れの知恵を自慢するな。賢くて無口な人が、他家を訪れても、ひどい目にあうことは稀だ。(6)
注意深い客は、食事のよばれたら沈黙を守る。人の話に耳を傾け、眼であたりに気を配る。このように、賢明な人は誰でも、あたりに注意をはらう。(7)

 
沈黙は金 なのかな。
辺りをギロッと気を配っていたら不審者になってしまうが、喋りすぎをオーディンは注意している。
 
分別

 
実際には、寒い北欧地方で他所からの客は歓迎されたと聞く。
人々は話に飢えていたそうだ。
知らない土地、知らない人々、知らない出来事。
それらを旅人から話してもらうのは、娯楽であり、大事な情報源でもあったという。
話上手な旅人がまた来るとなれば、近所の人も集めて話を聞いた(宴会になった)ものらしい。
 
もって出掛けるのに、すぐれた分別にまさる荷物はない。麦酒の飲みすぎより悪い糧食を選ぶな。(11)
人の子にとって、麦酒は、そういわれるほどよいものではない。たくさん飲めばそれだけ性根を失うものだから。(12)
愚か者は、ご馳走によばれると、口を開けて見とれたり、ぶつぶつつぶやいたり、じっとしている。だが、いったん酒を飲むと、その男の分別もどこかへ行ってしまう。(18)

 
そうですねw 気をつけます!
オーディンはへべれけになって分別を盗まれたことがある(13)ようだ。取り戻したようだけど(14)w

 

賢い者と愚か者
 
食いしん坊は、分別をもたないと、食べすぎて一生身体をこわす。(20)
家畜でも、いつ家に帰るべきかを知っていて、草地をはなれる。だが、馬鹿者は自分の腹の限度を知らない。(21)

 
……食欲魔神(大食漢じゃないけど食べるの大好き♪)のケバダチとしてはきついお言葉^^;
でも、本当。現代食だと糖尿病も怖いし、食べすぎには注意だよね。

性根のまがった哀れな男は、手当たり次第に何でもあざける。自分にも欠けた点がないわけではないのを、知ればいいのに、それには気がつかない。(22)
 
悪口って、秀でた者に対して劣った者がいう言葉だ、なんていうよね。
それと似てるね。
あざけるって、相手を見下すことで自分が優位に立ったと勘違いできる行為だから、その場に嫌な空気が流れるし、見下すしかないあざけてる方が、端からは哀れだなと見えるもんね。
 
愚か者は、毎晩目を覚まして、ああでもない、こうでもないと考える。朝になると疲れ果てるが、すべては前とかわらず、みじめなままだ。(23)
 
下手な考え休むに似たり ってことか。
夜は寝よう^^
 
愚か者
 
愚か者は、隅にいると、何でも知っているように思う。だが、人々が試そうとすると、どう答えていいかまるっきりわからない。(26)
愚か者は、人の集まるところへ出たら、黙っておるのがいちばんよい。あまりしゃべらなければ、彼が知らぬことに誰も気付かない。たくさんしゃべっても、何も知らぬということが人にはわかる。(27)
黙っていられない者は、馬鹿げたことばかりしゃべる。おしゃべるの舌は、誰もそれをとめないと、自らに災いをもたらすことが多い。(29)

 
とりあえず黙っておけ。ということかw
喋ると墓穴を掘るってあるもんね。
上に立つ人はそのほうがいいかもしれない。
自席発言なんて言葉使ってもヤジはヤジで、上に立つ人がそれじゃむにゃむにゃむにゃ…
 
誰でもほどほどに賢いのがよい。賢すぎてはいけない。あまり賢すぎると、その心が晴れることは稀になるから。
  
ケバダチ=賢くない が決定したw
わたくしの心は、具合が悪くない限り、ほぼ晴れやか。
少しは曇ることもあるけど、曇る自分がいやで、パーッといこーとなるw
 
人も他の人と話をすることで賢くなる。引っ込み思案では賢くなれない。(57)
 
人と話すって大きいよね。
自分が音楽に使ってる時間帯に、他の人は違うことに時間を使ってる。その人と会話できれば自分とは違うことを学んだ一部を教えてもらえることになる。
引っ込み思案でも今はネットもあるし、賢くなれないと断定するものじゃないよね。
でも、リアルでの会話はより豊かにしてくれるのは確か。
 
愚か者は財産か女の愛を手にいれると、鼻高々となり、増長するが、分別は増しはしない。(79)
 
分別を得る道は険しいねぇ。。。
 

友だち
 
たとえ近くに棲んでいても、悪い友だちのところは遠いし、たとえ遠くへ行ってしまっても、よい友だちのところは近い。(34)
 
実際の距離で考えてもそうだし、心の距離もそうだ。
 
友だちは、互いに武器や衣服を贈って相手を喜ばすべきだ。自分自身の経験にてらしてみればいちばんよくわかる。贈ったり、贈られたりして、友だちはいちばん長つづきする。うまく行きさえしたら。(41)
友だちには友だちらしくして、贈物には贈物のお返しをすべきだ。笑いは笑いで。嘘は嘘でうけとめるべきだ。(42)
友だちと、その友だちとも、友だちになれ。だが、誰も、敵の友だちの友だちにはなるな。(43)
もし、信頼できぬ友をもちながら、彼からよいことを期待しようと思うなら、口先だけきれいごとをいって、心では欺き、ごまかしにはごまかしでむくいるべきだ。(45)
お前の信頼できない、気心の知れぬ者についてもそうだ。その者には笑いかけて、心にもないことを話せ。贈物には同じ贈物を返せ(46)

 
どこか、冷めてるよね。
「友だち」と言いつつ、「利用」が頭にある。よね? オーディンは。
友だちが好きなものはわかってるからプレゼントしたいって自然と生まれる感情だ。
でも、オーディンの言葉はその関係すらコントロールしようとするよね。
そうあるべきなのかなぁ?
 
わたくしは友だちが少ない。
でもその友だちには心を許してる。
笑いには笑いを返せるけど、嘘をつかれたら怒るな。
嘘を嘘と受け止める器がケバダチにはないからw
なぜ嘘をつかれなきゃならないのか、振り回されるし、友だちと思えなくなる。
わたくしの考える友だちと、オーディンのいう友だちはズレがあるみたい。
 
それと、気心をしれない人に対してまで「心にもないことを話せ」には異議申し立て。
それもうまくやるコツなのかもしれないけどね。
噂に左右されないで真っ直ぐな自分をみせて話をすれば、いじわるだとか、不良だとか、マイナスレッテルを貼られてる人も、同じように話をし、楽しく交流できるって経験で知ってる。
信頼すれば信頼してくれる。(だから嘘には怒るんだけどね)
オーディンのそれはビジネスマンがいいそうな処世術なのかな・・・理解できそうにない。
 
悪い友との間には、火よりも熱い友情が5日間燃えあがる。だが、6日目がくると、火は消えて、友情は前より悪化する。(52)
 
だから、それは友だちとはいわないでしょw 
 
胸の思いをのこらず打ち明けるようにすすめる者は友情で結ばれる。だが、いいことばかり口にして、心のかわりやすい者は真の友ではない。(124)
 
だね。
 

人生
 
人の子らにとって、火と太陽の顔と、かなえば健康と、恥のない生活のできることが最上だ。(68)
たとえ健康でなくても万事みじめだという人はいない。ある者は身内ゆえに、ある者は富ゆえに、また、ある者は仕事ゆえにしあわせだ。(69)
生きていて生活を楽しめるほうがよい。(70)
びっこでも馬にのれるし、手がなくても家畜の番ができる。つんぼでも戦って、いっぱしの働きを見せる。めくらでも死んで焼かれるよりはよい。死体は何の役にも立たぬ。(71)

 
すべてがみじめだという人はいない、そうだ。
何かしらあって、そこに幸せを見出せるという。
そして、死ぬよりましだ、と、人生を謳歌しろとオーディンは言っている。
乱暴な物言いだけど、この言葉は勇気をくれるから好きだな。
わたくしみたいなちっぽけな存在も肯定されてる感覚がある。
顔を上げて生きよう、って気がするよ。
 
財産は滅び、身内の者は死にたえ、自分もやがては死ぬ。だが決して滅びぬのが自らのえた名声だ。(76)
 
決して滅びぬものは、死者すべてをめぐって取沙汰される評判だ(77)と重ねて言っている。
このエッダで最も有名な格言だろう。
伝記に取り上げられるような人は、何かを成し遂げて、その名を後世にまで残してる。
確かにオーディンの言葉は正しいだろう。
ただ、女は男より名声欲が少ないみたいで、この言葉は胸にあまり響かないw
 

男と女
 
風の吹くときに樹を斬り倒せ。天気のよいときに海に漕ぎ出せ。女とは暗闇で話せ。昼の眼は多い。船にはスピードを、楯には防御を、剣には一刀両断を、娘には接吻を要求せよ。(82)
 
船にスピードを要求するってわかるよ。
楯も防御できてなんぼだから、それもわかる。
それで娘には接吻を要求するのが当たり前なの?
あ〜たねぇ。。。
 
娘のことば、女のいうことなど信用するな。彼らの心は、回転する軸のようにつくられていて、移り気が胸にすくっているのだ。(84)
 
はあ〜???
ろくな恋愛してないんじゃないの? オーディンさんは。
 
わしは男も女も知っているゆえに、ざっくばらんに語ろう。男の女にたいする心は移り気なものだ。不実な心をいだきながら、われわれは口先だけきれいなことをいう。それで賢い人の心もだまされる。(91)
女の愛を得んとする者は、きれいごとをいって贈物をし、女の美しさをほめよ。お世辞をいう者は首尾よくいく。(92)

 
でたよ、口先だけ。
オーディンの口先だけって、つまり「利用」だよねぇ。
わたくしの少ない経験からも、見た目をほめたり内容以上に仕事の世辞をいう人は体目的だよ。
本当に好いてくれる人は、ごくごくたま〜に、本当に照れて聞こえないぐらいの声で言ってくれる。
言わない人のほうが愛してくれてる、そう思う。
まぁ、日本人だからそう思うのであって、北欧の人はまた違うのかもしれないけど、わたくしならオーディンは信用しないなw
 男と女
 
他人が恋をするからといってとがめてはならぬ。バカげたことには手を出さぬ賢い男でも、欲望をそそる美貌に手もなくとりこになる例は多い。(93)
 
これ、フレイのことかなw
 
 
この後も、女をものにするルーンとか、女があざむかないようにするまじないだとかあるけれど、どうしても手にいれられなかった話もする。(ざま〜w)
わたくしがオーディンの女性観に憤慨してるのは、性欲の対象としか見てないようなところなのよ。
ヴァン神族の近親婚をいやがるくせに、自分はあちこちの女に手を出してる。
そのうえ、魅力的な女をものにしたいと願うのは当たり前のことで、その願いを叶えるための指南ってことなんだよ。
それは性欲を肯定的にとらえてるのだから、決して間違ってはいないと思うんだけど、
どうもね。女からみると、納得しかねる。
まぁ、ヴァイキングが活動を広めていくうえで、その土地の女と仲良くなるのは大事なことだったと思うし、そこで子どもでも生まれれば平和に領土を広げることにもつながるから、手法としては有りなんでしょう。
 
オーディン。
主神であるからこそ、もっとステキであってほしい。
そんなわたくしの欲があるから、オーディンをボロクソに言ってしまいますがw
1つだけ気に入ってる絵があります。
 
オーディンの告別
「オーディンの告別」1875年頃、F. リーク
 

戦いに行く前のひととき。正妻のフリッグと。
いとおしく妻を抱き寄せる。
良かった。
フリッグも他の男と内通してたり、オーディンがしばらく留守だった時は、オーディンの兄弟と夫婦のように生活してたりで(おいおい!)、冷え切った夫婦に読めてたけど、命に関わる時には、やはり夫婦に戻るんでしょうね。
そう思いたいじゃないの。
夫婦は愛し合ってのものだと、神こそ示してください!w
 
 
【おまけ】
エッダのメロディ−。
 
オーディンの箴言=Hávamál は、古エッダの中に収録されている。
エッダというのは歌謡詩集なんだ。
吟遊詩人によって歌い継がれたもの。
歌、なんだよね。
じゃ、どんなメロディーで歌われたのかな? と思うよね。
一応、音楽屋さんなので、そこを素通りはできない。
 
ギリシャの古歌謡は大理石やパピルスに記されているものもあり、現在も演奏される。
人によっては音楽史の時間に耳にしたことがあるかもしれない。
詳しくないので、ほぼ素人感覚でいうと、邦楽に似ている。
どこか暗く、神聖という言葉が不気味という言葉と紙一重なのと同じ感覚。
 
音源もUPされてるので貼っておく。
↓古代ギリシャの音楽
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10718506
古くはBC138年頃の曲も入っている。
破損・紛失などによって、楽曲構成が欠落したものも、そのままの演奏になっている。
お経っぽいものまである。

 
温暖な気候のギリシャですら、古来の音楽はどこか暗さを伴うのだから、寒さの厳しい北欧ならもっと暗いだろう。
そう思っていた。
ところが、資料に載ってる譜面を歌うと、明るいw
エッダの基礎となってる「巫女の予言」の一節なんだけれど、譜面を見ながら笑ってしまった。
グレゴリオ聖歌のような感じで歌っていいかもしれない。
 
347.jpg
「巫女の予言」3節
 
はるかなる時のはじめ なにひとつ在るものはなかった。
砂も海もなく、冷たき波もなかった;
大地はまったくなく 高き空もなかった、
在りしは大きく開きしうつろ、また草はいずこにもなかった。

 
この譜面はある研究者の論文からの引用だそうだ。
これだけですべてを語れるわけではないが、とても穏やかな旋律。
ギリシャ古音楽が暗めだったように、平家物語の琵琶法師の語りがそうであるように、
北欧神話の歌にも暗さと危機迫るものを想像していたわたくしは、肩すかしを食らった。
 
ヴァイキングやその祖たちの時代、この箴言にも載っているが他人の家に3日以上泊まるべからずというのがあったらしい。
けれど、地方によっては客は歓迎されるものであり、遠方からの客は1週間ぐらい泊まってもらい、毎夜近所を集めて宴会モードで他所の話を楽しんだと聞く。
厳しい冬、雪に閉ざされ、近所との往き来もそうそうできない時期などの孤立感はとても大きかったそうだ。
旅人が新聞のような役割をもち、ニュースを運んでくれ、近隣との社交の場を作ってくれる。そんな感じだったとか。
そこで北欧神話が歌われたし、王宮では吟遊詩人が神や王を讃える歌を歌うことでかなりの地位を得た。
その歌は人を酔わせるものであっただろうし、この旋律からも気持ちよくなれる歌が好まれたのではないかと想像できる。
 
なんだろう・・・
地の自然の厳しさから生まれた、他の神話よりも厳しい結末がまつ神話だからと、そのイメージで判断するのは危険だね。
とても激しい格闘技を愛する国民ほど平和的であるように、厳しい神話を信仰していた人々だからこそ、柔らかく穏やかな歌が好まれていたのかもしれない。とケバダチは思うのでした。
自分の予想は外れたんだけど、なんだか、嬉しい裏切りにあった感じです^^
 
 

北欧神話ーフギンとムニン

フギンとムニン
 
ジョーンズオーディン
「オーディン」E・バーン=ジョーンズ 1870年頃
 
オーディンの両肩に描かれることの多い、フギンとムニン。
パペガでは19階層ラストに2羽そろっている。
 
244.png
1羽しかスクショ撮れてないけど、2羽いる
 
小さいw
最初はこれがボスだなんて思わなかった。
 
彼の肩には二羽のワタリガラスがとまっていて、自分の見たり聞いたりした消息をみんな彼の耳に告げる。その名前はフギンとムニンというのだ。これをオージンは夜明けに送り出して全世界を飛びめぐらせ、彼らは朝食の時刻に戻ってくる。このため彼は数多くの消息がわかるのだ。それで人びとは彼をフラヴナグズ(ワタリガラスたちの神)と呼んでいる。(略)
 <「ギュルヴィの惑わし」38章>

 
フギンとムニンはオーディンのペットというより従者の位置づけになっている。
オーディンとオーディンだけの秘密を共有する従者、という感じ。
彼らは、夜明けとともに世界中から情報収集してくるっていうんだ。
そして朝食時には戻って来てオーディンに報告。
それでオーディンは巨人の世界のことだろうが、人間の世界のことだろうが、何でも知ってる。
と言ってるんだ。
ヴァイキング時代の生活では、食事は日に2回で、朝食はだいたい8〜9時、夕食は午後の7〜8時の間にとっていたそうだ。
すると、フギンたちは夜明けから8時ぐらいまでが活動時間のようだね。
 
これが日本だったら、それでなるほど〜と頷いておえるけど、北欧だよ。
夏の昼は長いけど、冬の昼はとても短い。
日の出がすごく遅いはずだよね。
ストックホルムだと、夏至の頃の日の出は3時半ぐらい。
でも冬至の頃は、8時40分ぐらいなんだ。
遅めの9時に朝食だとしても、どこでもドアでもないと周りきれなさそうだ。
アイスランドのレイキャビクだと、夏至の頃は2時台に日の出。
対して冬至の頃は11時過ぎ。
・・・フギンたち、いつ活動するの?
(そこが神話なんだから突っ込んじゃだめだよねw)
 
先の文章の続きに引用されているのが「グリームニルの歌」
 
鴉フギンとムニンは、毎日大地の上をとぶ。フギンが戻ってこないのではないかと、わしは心配だが、ムニンのことはもっと心配だ。
 <「グリームニルの歌」20>

 
フギンHuginnは「心」や「思考」で、ムニンMuninnは「識別の力」や「記憶」を意味する。
オーディンは「心」や「思考」が戻らないことも心配だけど、「識別の力」や「記憶」が戻らないのはもっと心配した。
ということみたい。
 
「ユングリング・サガ」によると、2羽はオーディンによって人の言葉を教え込まれとある。
一方、フギンとムニンはオーディン自身ではないかという見方がある。
 
オーディンは鳥や獣に変身することもあった。
そして変身しているあいだのオーディンの体は眠っているか死んでいるかのように横たわっていた。という。
先のエッダでは、戻らないことをとても心配している。
もし自分自身の「思考」と「記憶」が情報収集に奔走しているとすれば、戻ってこないことに不安を覚えるには当然だろう。
 
このことから、フギンとムニンはオーディン自身じゃないかと見るんだね。
ではなぜワタリガラスなのか。

わたくしの知る範囲はとても狭いけれど、日本でも世界でも、ワタリガラスが「賢い」存在であるとともに「呪術的」な意味合いがもたされてる物語が多いと思う。
もともとカラスはとても賢いよね。
カラス博士の杉田先生によると、カラスは人間の男女も表情も見分けるらしい。
人間がカラスの♂♀の見分けなんて普通にはできないことだよ。
記憶力も鳥類の中では群を出てるそうだ。
カラスの賢さは今に始まったことじゃないんだから、昔から特別の鳥として見られるのも自然だろう。
 
都内でカラスが増えすぎて駆除に追われているけど、ロンドンもそうだったらしい。
でも駆除するどころかロンドン塔で大事に飼育されてるんだって。
カラスがいなくなると王国が滅亡する予言があったらしい。
それにケルト神話のアーサー王が魔法でカラスにされたことがあるんで、カラスをやっつけるわけにはいかないそうだ。
(ケルト神話と北欧神話は別物だけど、内容がとても近い。地域も民族も重なってる部分があるので当然かな)

イギリスついでにハリポタのこと。
英語でカラスはクロウだけど、大きめのカラス(ワタリガラス)はレイヴンと教わった。
だからハリポタのレイヴンクロウは「ワタリガラスカラス」になっちゃう〜wと思ったけど、clowじゃなくてclawだった。
(聞き分けむずかしい〜ね〜)
映画ではちゃんとワタリガラスの紋章になってたよね。
clowじゃなかったけど、ravenだから疑問にも思わなかったけど、原作では違うらしい(読んでないw)。
原作ファンは頷きがたいことかもしれないけど、
あの4つの寮でレイヴンクロウは特に知能を求めたというんだから、シンボルがワタリガラスで適当だろうとわたくしは思う。

 
UiTø_Logo

ノルウェーのトロムソ大学のロゴ 

 
トロムソ大学HP
トロムソ大学のトップページ

 
この大学のロゴにデザインされてるのは、フギンとムニンなんだそうだ。
「心」や「思考」、「識別の力」や「記憶」
学徒の杜にふさわしいシンボルになってる。
やはりフギンとムニンは、鷲や鷹じゃなくて、カラスであるべきなんだろう。
 
これとは別に、フェンリルが狼全般を指していたように、フギンもカラス全般を示しているのかな?という文もいくつかあった。
 
ヴァルキューレたちが飛びかい、フギンの餌(死体)を、女巨人の馬(狼)が平らげた
<「フンディング殺しのヘルギの歌1」54から>
ヴェルスングの若者が戦ってフギンを喜ばせたとき
<「レギンの歌」17から>
死骸の巨人(狼)がフギンとともに、シグルズの心臓の血をむさぼり吸ってからというもの
<グズルーンの歌2」29から>

 
などがあって、死体(特に戦死者)をむさぼるカラスとしてフギンの名が出ている。
フギンが鴉全般を指す言葉として使われていたのなら、オーディンが変身して情報収集していることが、伝承の中でいつしか独立した2羽のワタリガラスが存在したんじゃないかな、と思う。
 
スノッリの冒険から
「オーディン」1899、G. ムンテ、「スノッリの冒険談」の挿絵

フギンとムニンが独立した存在ならこの絵のような状態も可能だ。
まぁ神話なんだから深く突っ込む必要もないんだけどね。
 
Odin_from_Lejre.jpg
銀製のミニチュア ロスキレ博物館、デンマーク
 
中央の玉座にオーディン。
左右にフギンとムニン。
後ろにゲリとフレキが配置されてるのは珍しい。
 
他の情報は無し。
オーディンの従者、あるいはオーディン自身と思われるフギンとムニンを、パペガでは階層のボスとして登場させたのは何でだろう。
う〜ん。
スレイプニルのような神馬ですら、パペガでは討伐対象なんだから気にしなくていいのかなw
 
フギンとムニンをまとめていて思ったのは、スプレンドルミサスの歩き方。
歩き方というか、正しいコーディネイト?かな。
オーディンスタイル、というべきか。
スプレンドルミサスは北欧神話での登場巨人などがたっぷり出ている所なんだから、
その世界をかっ歩するなら、ペットを4匹ぐらい連れる器量があっていいでしょう。
ペットを複数引き連れたほうがオーディンに近づける、でしょう?
グングニルを持ってね。
獣王の印とかだっけ? よくわからないけど、ペット複数連れ出せるもの。
それを使って、犬系(ゲリとフレキ)2匹+鳥類(フギンとムニン)2羽を引き連れて歩いてほしいね。
(どっちも黒か灰色系がよさそうだね。ないかな)
あるいは鳥類2羽と、スレイプニルに代わる馬にまたがってかっ歩してほしい。
 
337.png
こんな感じかなぁ。マクパペットにペットもあるといいのになぁ。更新もしてほしいなぁ〜
 
そうすべきだ、と書きたいけど、ケバダチにその器量ないんで強く言えないw
将来はできるようになりたい〜^^
 
 

北欧神話ーマーナガルム

マーナガルム
 
マーナガルム
 
18階層のラストマスにいるボス。
いや〜怖い顔だわ〜。
どんな攻撃、してくるんでしょうね!(はい。これも全く覚えてませんw)
 
(略)ミズガルズの東の、イアールンヴィズという森に一人の女巨人が住んでいる。この森にイアールンヴィジュルという魔女たちが住んでいる。
ところで、この女巨人がたくさん巨人を生み落としたのだが、それがそろいもそろって狼の姿をしているのだ。先の狼も(スコルとハティのこと)ここから由来するのだ。そしてこの一族のうちでもいちばん強いのが、マーナガルム(月の犬)だという噂だ。
この狼は、死ぬ人間すべての肉で腹をみたし、月をとらえ、天と空を血塗る。そのために太陽はその光を失い、風は立ち騒ぎ、あちこちでざわめいた。(略)
 <「ギュルヴィの惑わし」12章より>

 
つまり、スコルもハティもこのマーナガルムも巨人族であり、母を同じくする兄弟だ。
(父が誰かはわからない。巨人は一人でも産むことができることもあるので、母だけかも)
誰がお兄さんかなのかな。
一番強かったのがこのマーナガルムというのだから、一番上のお兄さんなのかもしれないね。
「この狼は、死ぬ人間…」からの文章は、ラグナロクのことだろう。普段から死ぬ人間に食らいついていたかどうかはわからない。
けれど、狼は今でもいるし(対狼の猟銃はつねに玄関の戸に向けられてるときく)、いくつかのサガにも狼は人に襲いかかり食い荒らした場面がある。
ミズガルズは人間の世界だ。
そこから東にあまり遠くなく住んでいたのなら、人間達にとっては脅威の存在だっただろう。
 
このマーナガルムとハティがしばしば同一視される。
ケバダチは違うと思っていて、その理由はハティの記事に書いた。
 
しかし、ハティの記事も実はちょっと違うw
バランス優先で「月を呑み込むのはハティ」と書いた。
本当は「月を呑み込む」ヤツはいないんだけどね。
どこにも書かれていない。
ただ、呑み込まれないと闇にならないから、そこは想像の余地として書かれてないか。
あるいは原文が消失したのかもしれないと考えて、「ハティが呑み込み」という考えを書いた。
半信半疑のところ。研究者もわれているようだ。
まぁ、わたくしの浅学での結論ですので、参考にしても鵜呑みをする方はいないと信じております。
 

手持ちの資料からの情報はこのぐらい。
マーナガルムがどんな特徴をもっていたかはわからない。
 
今パペガwikiを見たら、3階層のガルムとほぼ同じ攻撃みたいだね。
でも、ガルムと兄弟じゃないよ。
北欧神話によればガルムは犬の中で最高の犬なんだ。
マーナガルムは兄弟達の中で一番強い狼。
なので、力比べをすれば、多分3階層のガルムのほうが強いと思う。
あ、それと、犬と狼は同義語。
豚と猪も同じ。
その昔の言葉が(古ノルド語)やがて現代の言語で犬と狼に別れてるから、ガルムを犬と訳してるだけ。
生物学的にどうのこうのだって、その昔に分類してたわけじゃないしね。
 
ガルムとマーナガルムは「亜種」ではないかという考えを教えてもらった。
パペガにおいては亜種扱いかなと思う。
北欧神話においてはどういう言葉を選んだかによって意味づけされているので、狼であるガルム(3階層のガルム)を「犬(ガルム)」としたのは、番犬という役割をもっている=家畜化してるから、ガルムという名で語られたんじゃないかと思う。
(犬は家畜化された狼のことだから)
マーナガルムは月を追うものとして一部で語られていた。
それでハティと同一視されてるわけだけれど、わたくし個人としてはマーナガルムは単体ではなく、月を脅かす狼という意味でマーナガルム(という言葉)が使われているように思うのです。
それは時にはハティをさして「マーナガルム」と言われたり、フェンリル(強い狼)を指して「マーナガルム」と言われたり。
そしてこの一族のうちでもいちばん強いのが、マーナガルム(月の犬)だという噂だ。
この文章からも、俗称のような使われ方とみることも可能かな。
そうなると、マーナガルムという単体はいない可能性もありか、と考えはじめてます。

 
 
さて、おまけ。
スウェーデンの今のマーナガルムの動画を貼っちゃうw
マーナガルムという名のメタルバンドだ。
彼らのPVをいくつか見たら、どれもヴァイキング時代を髣髴させるもので北欧神話の世界を感じる手助けになるの。
調べたら彼らの音楽ジャンルはフォークメタルとなってた。
スウェーデンでロック、とくにメタルが人気なのは知ってた。
その中でもフォークメタルというのは、神話やおとぎ話をモチーフにメタルロックしたもので、これまた人気があり、バンド数もそれなりになる。
ヴァイキングメタルとも言われることもあるようで、彼らのはまさにそうなのよ。
この曲は「Sons of War」というだけあり、ヴァイキング達の戦いPVになってる。
風景はきっと当時もこんな感じ。
服装はちょっと洗練されてる気がするけど、槍を手に馬を走らせるのはこんな感じだっただろうとわかりやすい。
 
 
歌詞は「私たちは戦争の子だ」と歌ってる。
「戦争」は戦争の神オーディンのことだろう。
だから、「私たちはオーディンの子(末裔)だ」という意味じゃないかな。
渡りガラスのように飛翔し、帆を張り、未知の土地へ出航していく。
ニョルズの海を渡って、団結して戦う。

(ニョルズはフレイの父親。ヴァン神族の王のような存在で自然の神。だからニョルズの海なんだろう)
という感じでヴァイキングを歌っている。(歌詞は英語だけど言語センスないんで間違ってたらごめん^^;)
音楽としては、鬼の両足キック奏法が闘いを鼓舞してていい。
まぁ、ヴァイキングの舞台を観るつもりで、PVをどうぞ。
 
 

北欧神話ーグリンカムビとヘイムダル

北欧神話のまとめ。いつものようにゲームとは直接関わりありません。
 
 
グリンカムビ
 
グリンカムビ
 
17階層ラストマスのボス。グリンカムビ。
(↑のスクショだよね? 整理してないから間違ってる可能性もある^^;)
 
グリンカムビは世界樹ユグドラシルのてっぺんに止まっている雄鶏。
グリンカムビは「黄金のとさか」という意味だそうだ。
ん? なんか、聞き覚えあるよね。
そう。12階層のボス、ヴィゾーヴニルと似てるよね。
 
アース神のものでは、グリンカムビが鳴いて、戦の父の戦士たちを目覚ました。…(略)
 <「巫女の予言」43より>

 
最終決戦、ラグナロクの始まりをグリンカムビが鳴いて伝える。
そのときの声で、戦の父の戦士たち=エインへリアルたちが目覚め、出陣の支度にとりかかるんだ。
 
手持ち資料その他をみても、出てくるのはこれだけ。
終わり。
いえいえ、ネットでも少しは調べましたよ。
日本語版wikiにこんなイラストが差し込まれていた。
 
ヘイムダル
 
ヘイムダルだ。
「グリンカムビとおぼしき雄鶏を…」とあるね。
こういう絵って暗喩だったり、実は同じ事を表現するための重ねる手法だったりする。
ラグナロクの際、それを知らせるラッパを吹いたのはヘイムダルだった。
グリンカムビも鳴いてエインへリアルたちを起こす。
共にアースガルドに住まう神や人を起こす(知らせる)役目なんだ。
 
ヘイムダル
 
ヘイムダル(ヘイムッダル、ハイムダッル)はアースガルドと他のを結ぶ虹の橋(ビフレスト)を守る神々の番人。
人間の祖先でもある。
 
ヒミンビョルグという所あり、
そこでヘイムダッルが聖所を治めると、人びとは言う。
そこにて神々の見張り人は
心地よき住まいの中で愉しく
うまき蜂蜜種を味わう。
 <「グリームニルのことば」13>
 

ヒミンビョルグはヘイムダルの館。
アースガルドの端にあるにあって、虹の橋の側だ。
知らずに巨人が出入りしないよう見張り役をしてるんだ。
関所みたいな感じだろう。
そこに出入りがなければ、お酒を飲んで楽しく過ごしているみたいだ。
 
わたくしは個人的に、このヘイムダルこそ神らしい神だと思っている。
 
今までの北欧神話記事を読んだ人はわかると思うけど、どの神もやたら人間くさいよね。
いたずらばかりするロキとか。
誰かれ構わず一夜を共にするフレイヤとか。
恋したら後先考えずに武器をあげちゃうフレイとか。
主神のオーディンさえ、人間のことに口を挟みすぎて災いの元になってるようにも見えることがある。
その点、ヘイムダルは神の世界で酒をくらってるなんて、その暢気さはわたくしから見れば神様らしい存在w
生まれもちょっと変わってる。
 
なんと、9人の巨人から生まれてるんだ。
巨人の9姉妹がオーディンとの間にヘイムダルを息子として産んだんだ。
9人で1人を産む???
訳がわからないよw
その9姉妹は「波」のことだろうと考えられている。
波から生まれたなんて神らしい話でしょう。
生まれたヘイムダルの歯は黄金なんだ。
黄金というのは富や権威の象徴なだけでなく、神聖さも現している。
生まれながらの神ってことだろう。
 
Heimdal_and_his_Nine_Mothers.jpg  
「ヘイムダルと9の母親」1908、W. G. コリングウッド
 
(略)彼は鳥よりも睡眠を必要としない。夜でも昼でも、百マイルはなれたところまで見えるし、地面の草の生長する音や羊の毛が伸びる音、それより高い音は、もらさずききとれるのだ。彼はギャラルホルンという喇叭(ルーズ、ラッパ)をもっており、彼の吹き鳴らす音は世界の隅々まできこえる。(略)
 <「ギュルヴィの惑わし」27より>

 
寝なくても平気。
100マイル(約160km)(古代の100なら120のことだから200km近くの長さになるね。本当にマイルなら。原文未確認)まで見える視力。
草の生長する音よりも大きければ聞こえる聴力。
何dBから聞こえたんだろう。すごいよ!
これこそ神だよ!
この視力と聴力をかわれて番人となったんだろう。
(オーディンが知恵を得るために片眼を捧げたように、ヘイムダルもその聴力を得るため片耳を捧げたと考える研究者もいる。まだその証拠を示す文章は見当たらないらしい)
 
さらに彼は人間の階級を生んでいる。
エッダの中に「リーグの歌」というのがありその誕生が詳しく歌われている。
リーグはヘイムダルのことだ。
 
リーグはある農家に宿を借りる。
そしてそこの夫婦の真ん中に横になった。
つまり、夫・リーグ・妻の川の字だ。
 
人間の祖
これはふざけすぎかなw
でも夫婦の間に割り込むってできることじゃないよ。
「わたしは神なのだ。言われたとりにしなさい。悪いようにしない」
とか言ってるんじゃないかな。

 
そこで3晩過ごし、旅に出てある館に泊まる。
また夫婦と川の字で3晩過ごし、次の館へ。
またも夫婦と川の字で3晩。
やがて9ヶ月経ち、それぞれの夫婦に子どもができる。
最初の夫婦には、黒くて醜いが丈夫な子が生まれる。
奴隷階級の祖先だ。
次の館の夫婦からは、目がよく動く子が丈夫な子が生まれた。
自由農民の祖先だ。
最後の館の夫婦からは、髪はブロンドで頬が白く、目は蛇のように鋭い子が生まれた。
彼が王侯階層の祖先になるようだ。(その言葉が書かれるべきところは消失している)
「リーグの歌」は王侯階層の間で成立したそうで、後ろが消失しているということだけれどなかなかおもしろい。
ヘイムダルが各階級の祖先となる子を夫婦と生み出すんだが、その夫婦の名前が「祖父」「祖母」など、古ノルド語の勉強になってしまう。
日本の神話の神々も名前にちゃんと意味があったよね。詳しくないけど共通点があっておもしろい。
言語センスのないケバダチは慣れない言語にあたふたしちゃうけれど、それでもおもしろいと思えたので、入門にいいと思う。

 
アース神の信仰があった時代は、身分制度があった。
王→諸侯→自由農民→奴隷
場所によって多少の違いはあっても、だいたい、大きくこの3階級に別れていたそうだ。
(アイスランドは除く。アイスランドは王制を嫌って逃れた人たちが建国した共和制社会)
「リーグの歌」によると階級ごとに人間の容姿から能力まで、怒りを伴うほどの差別があるけれど、当時の考えを知るにはいい。
 
 身分階級

図にするならこんな感じ。
奴隷階級の人も、「神が人間に身分と階級を与えて作られたのだ」と言われれば、その身分を受け入れるしかないだろう。
神ははじめに枝に息を吹き込んで人間を作った。
けれどその人間は、漠然とした人間だった、ということのようだ。
「ヘイムダルが各階級の祖先を作った」というこのエッダは、政治的に作られてると強く感じるけれど、奴隷には奴隷の、王侯には王侯の生まれながらの使命がある、あるいは使命を持って生まれてきたのだと納得させる内容じゃないかと思う。
そういうわけで、ヘイムダルこそ神様らしい仕事をしてるってケバダチは思うのです。
 
さらにヘイムダルは、「白きアース」と呼ばれるぐらい神聖で美しかったそうだ。
エッダによっては「アースで一番美しい神」というのもある。
まぁ一番美しいは他にもいるんで、アースガルドで嫌う人はいなかった存在なんだろう。
 
オーディンは槍が目印であるように、ヘイムダルはラッパが目印。
ギャランホルンという名の角笛で描かれている。
ただ、北欧神話の最も基礎となる「巫女の神話」ではフリューズと書かれていて、当時のそのラッパはこんなだったらしい。
 
 
hljóð old north grafið
「青銅製ルーズ(ラッパ)」デンマーク出土、デンマーク国立博物館蔵

 
年代がわからないんだけど、最も古い時代にはこんな形のラッパを持つのがヘイムダルのイメージだったのかもしれない。
このヘイムダルのラッパが、ラグナロクの始まりをアースガルドの神々を起こすんだ。
そしてアース神の世をラグナロクへと導いた元凶ロキ、と決するのもこのヘイムダル。
(もとから犬猿の仲だったみたい。ロキとの決戦はまた別に)
 
220px-Processed_SAM_heimdallr.jpg
「ギャラルホルンを吹くヘイムダル」18世紀写本から
 
最終決戦を知らせるラッパは黄金でできていて、その時までユグドラシルの下に隠しておいたそうだ。
吹き鳴らすと、諸世界すべてに聞こえる。
これでアース神を戦に呼び集めたんだ。
 
グリンカムビはエインへリアルを。
ヘイムダルはアース神たちを。
ラグナロクの開始を知らせる役割は同じ。
だから、最初にあげたようなグリンカムビが頭にのった絵が描かれたんじゃないかな。
 
また、ヘイムダルはその生まれから「波間から上ってくる曙光」だと学者によっては解釈されている。
夜明けの光とニワトリのときの声。
どちらも決戦の幕開けらしい例えだよね。
 
 
さてグリンカムビとヴィゾーヴニル。
共に黄金色で、ユグドラシルのてっぺんにいる。
このため両者同一ではないかという説もある。
わたくしも同じだろうとみている。
何度も書いてるが、とにかく信仰された地域が広いので、全く同じ伝承なんて有り得ないし、二次創作もある。
同一だとしたら、どちらが親で、どちらがコピーか。
わたくしは特別な役割のないグリンカムビが、ヴィゾーヴニルとして二次創作されたんじゃないかと思っている。
同じ人物が別の名をもつって、あまりにも多い北欧神話の中のことだしね^^;
 
ヴィゾーヴニルではなく、グリンカムビがメインだと思うのは、これを知ったから。
  logga-livstr.gif

スウェーデンはヘリエダーリン地方Överhogdalの特産品として商標登録しているのがこれ。
ユグドラシルと、そのてっぺんにグリンカムビがデザインされている。
ヴァイキング時代のものが見つかって(炭素検査によると9世紀〜12世紀の品だそうだ)、その昔ながらのタペストリーを製作販売しているようだ。
 
tapeten-a1.jpg

 
このタペストリーのデザインからとったみたいだね。
それにこんな昔ながらの燭台も、スウェーデンでは普通にみかけるらしいんだ。
 
IMG_0288.jpg

 
やはりユグドラシルとグリンカムビ。
スウェーデンの人がグリンカムビというなら、やはりグリンカムビありき、だと思うのよ。
パペガではヴィゾーヴニルと別にしているよね。
それもありだと思う。
「これが正しい」というほど、ハッキリわからないのが神話らしいしね。
さらに研究が進むのを期待することにしよう。
 
最後になったけどこのグリンカムビ。
パペガではどんな攻撃してくるんだろう。(ま〜ったく覚えてないw)
怪音攻撃みたいなのがふさわしいと思うが、パペガにSE攻撃はないよね。残念w
 
 

北欧神話ースルト VS フレイ

パペガで遊ぶ時間を使って北欧神話のまとめ。
超特急で行きます!
自分のためなので、興味ない人はスルー推奨。
 
 
スルト
 
スルト
 
15階層ラストマスにいるスルト。
灼熱の国ムスペルスヘイム(ムスペッルスヘイム)の長。
へイムというのは国とか世界とかいう意味で、ムスペルスヘイムは「ムスペルの住民の国(世界)」という意味だ。
スルトはそこの長で、国境を守っている。
 
ムスペルがどういう住民かというと、これはあまり語られてない。
最終戦争ラグナロクにおいて神々に挑戦していく、というぐらいしかない。
(他にはスルトの奥さんシンモラがレーヴァテインを保管してるという話ぐらい)
神々を圧倒する力の持ち主だったムスペルたちは、浅黒い巨人とされており、巨人族ではないが巨人に近い外見だったと思われている。
太陽や月や星はムスペルスヘイムからの飛び火で作られた、とあるぐらいなので、灼熱の国というだけじゃ足りない。
 
(略)だが、いちばん初めには、南の方に、ムスペルという世界があったのだ。それは明るく、熱く、その辺りは焔(ほのお)をあげて燃え上がり、異国の者で、そこに生まれたのでない者は、近づけなかった。そこの国境警護の任についている者はスルトと呼ばれている。彼は手に燃えさかる剣をもち、世界の終わりにやってきて、荒しまわり、神々を一人残らず打ち平らげ、全世界を火で焼き尽くすだろう。(略)
 <「ギュルヴィの惑わし」4より>

 
そこが強烈に熱い(暑いじゃなくて熱いってすごいよね)世界で、その周りは炎で囲まれていたようだ。
それだけでも、よそ者は近づけないというのに、さらにスルトが国境警備してたんだから、大切なものはスイス銀行よりムスペルスヘイムに預けておいたほうがいいんじゃないかと思ってしまう^^;
そのムスペルの住民は独自の陣形を駆使する知性があったと考えられている。
 
スルトという言葉には「黒」とか「黒い者」という意味がある。
それと炎をポイントで描くのに、パペガのスルトはとてもよくデザインされてると思う。
黒い体にヒゲや髪も炎だなんて、まさにムスペルへイムの長だよね。
 
スルトの絵で有名なのはこれ。
 
800px-The_giant_with_the_flaming_sword_by_Dollman.jpg
「炎の剣をもつ巨人」1909、J. C. ドールマン
 
巨人族ではないんだけど、まるで巨人のように描いている。
最終的にはすべてを焼き払ってしまうんだから、大きな体格だと説得力あるよね。
これもスルトのイメージが伝わるよね。
フレさんの記事によると(ギリギリパペガ生活「16階層まで」)アイスランドの火山性の新島にはスルトに因んだ名が付けられたとある。
手持ちの資料には1963年7月に形成された島で「スルトセイ」と命名されたとあった。
つづりは「Surtsey」でスルツェイ島とよばれる。
(スルツェイが「スルトの島」という意味だから、スルツェイ島っていうと「スルトの島島」になっちゃうw)
なるほど、これを知っていれば、スルトは山のごとく大きいって思うよね。
 
またアイスランドなのも頷けてしまう。
アイスランドは日本のように火山の上にある国だ。
4,5年前の噴火では欧州の空の便が数週間もマヒして驚いたよね。
日本と違うのは、緯度が高くて寒い国だというところ。
北欧神話での世界の始まりは大きな穴からだった。
そこに霜の国の冷たい空気と、灼熱の国の熱い空気がぶつかりあって、初めての命が誕生する。
アイスランドこそ、その冷たい空気と、活発な火山の熱さや、ラグナロクのすべてを焼き尽くす火を想像する噴火活動があって、神話の舞台にうってつけの場所だろう。
その神話が誕生したのはデンマーク及びスカンジナビア半島なんだけれど、アイスランドで熟成した(多くのサガが残されてる)のも、その地域性から納得できることだよね。
 

さて、ラグナロクですべてを焼き払うスルトだが、その前に対決した人物がいる。
グリンブルスティの持ち主。ヴァン神族でありアースの三大神と言われる、フレイだ。
 
フレイ
 
和平協定で人質の一人としてアースガルドにやってきた、ヴァン神族のフレイ。
(画像はヴァイキングの記事に18禁として折りたたんであるので、そちらを参考に)
アース神達がヴァン神族におくった人質は、役立たずと言われる者もいたけれど、ヴァン神たちはヴァン神族の中でも最高の神を人質としてアースに送り出した。
いわば血統書付きのプリンスだ。
眉目秀麗で力強く、豊穣、富、財産、結婚、恋愛の神、(男根神)。
また呪縛から解放する神でもある。
 
フレイはグリンブルスティの記事でも触れたように、ドヴェルグ作の素晴らしい宝を保持している。
必要なものすべてが載せられるまで大きくなり、不要な時はポケットに折りたためる船、スキーズブラズニル。
闇も明るくする、光のイノシシ、グリンブルスティ。
それだけじゃない。
その愛馬は、暗く揺らめく炎を飛び越え、濡れた山も駆け抜けることのできる名馬だし、剣は持つ者が賢ければ、ひとりでに巨人を倒すとされる魔法の剣だ。
ひとりでやっつける剣だよ。すごい!
フレイの宝だけれど、アースガルドの宝でもあった剣だ。
 
オーディンのグングニルは、狙えば的を外さずに飛んでとらえる。
トールのミョルニルも確実に相手を仕留める。
そしてこのフレイの宝剣もひとりでやっつける剣なんだ。
どんなに巨人たちが攻めてきても、優秀な死者エインへリアルはいるし、これら魔法の武器があれば間違いなく勝てるだろう。
そう神々は思っていた。
それなのに、フレイはこの宝剣を手放してしまう。
いともアッサリと。
恋を成就させるためにw
その魔剣がないために、スルトを退治することができず、そのまま世界はスルトに焼き尽くされてしまうんだ。
フレイよ。。。
 
1908collingwood.jpg
「フレイの恋煩い」1908、W. G. コリングウッド
 
フレイは一目で恋に落ちた。
オーディンの高座からある美女を見つけてしまったから。
フリズスキャールヴ(オーディンの高座)は、腰掛ければ世界中で起きている出来事をつぶさに知ることができる魔法の椅子だ。
これは王権の象徴であるので、正妻のフリッグ以外は座ることを許されていない。
ところが、どうしてか、フレイはそこに座ってしまった。
オーディンが留守だったので、ちょっとした興味から座ってしまったのかもしれない。
そして巨人の娘に恋してしまったんだ。
 
巨人族は醜い設定だけれど、娘に関してはそうとは限らない。
美人も幾人かいたようで、神といろいろ、ね、やりとりがある。
フレイもそんな美人に心を奪われた。
座ってはいけない高座に腰を下ろしたむくいだろうと「ギュルヴィの惑わし」には書かれている。
 
フレイの恋
 
恋煩いで前後の見境がなくなってたのか。
こうしてフレイは大切な魔剣をスキールニルに渡してしまったんだ。
このことで、アースの神々がどれだけ落胆したことか。
魔剣を手にしたスキールニルがラグナロクで活躍すればまた違う結果になったかもしれないけれど、スキールニルはこの一件以外に書かれてはいない。
いいものをもらったとトンズラしてしまったのかもしれない。
 
フレイが恋したのはギュミルという名の巨人の娘ゲルズ(ゲルダ)。
巨人族の中でも器量よしなのは周知されてたのか、彼女の部屋には獰猛な番犬もいた。
けれどスキールニルは宝をもらっただけの仕事はする。
ちゃんと彼女に会い、フレイに代わって申込みをし、承諾のために宝も示す。
けれどゲルズは拒絶。
あれならどうだ、これならどうだとスキールニルは示すけれど、ゲルズは神族との結婚などする気は毛頭なかった。
するとスキールニルは脅しにかかる。
魔剣で彼女の命を奪うと言っても頷かないので、父親を殺すといいだす。
しかも、魔剣の呪いで、ゲルズを醜くするという。
その生涯から恋愛や幸福を奪おうというんだ。
さすがのゲルズも降参。
会う約束をする。
この会う約束は、妻になるということだ。
バリという静かな森で、9日目の夜に約束がなされた。
 
Skírnir_and_Gerðr_III_by_Frølich
スキールニルがゲルズに脅しをかけている場面 1895、F. フローリヒ
 
9日目の夜。
今まで北欧神話の記事を読んでくれてた人はわかると思うけど、「9」という数字がちょくちょく出る。
これは古代ゲルマンでは神聖な数だった。
神に関わるものごとや、魔力に関わるものごと、それも神話での正義に関わるものに「9」がついてまわる。
ここではゲルズが9日目の夜と指定したんだけれど、それは申し出を拒絶していた巨人族だが、そこではすでに神族に近づいていることを「9」という数字が表しているんじゃないかな。
 
フレイの恋2
 
フレイの恋は実った。
このゲルズと二人並んだ金属製のお守りも発見されてるそうだ。
その恋は成就したんだから、御利益がありそうだよね。
見てみたい。
それにしても、眉目秀麗なのだからスキールニルに頼らず、自分で申込みすれば魔剣を失うことなくゲルズも射止めたんじゃないかと思うんだけどね。
そこがお坊ちゃん育ちの頼りないところなのかな。
それでもフレイはがんばった。
 
Freyr_and_Surtr_by_Frølich
「ラグナロクでのフレイとするとの戦い」1895、L. フローリヒ

(略)オージンが狼に向かって戦うとき、ベリ殺し手は輝きながらスルトに向かう(略)
 <「巫女の予言」53>

 
ラグナロクでオーディンがフェンリルと戦っている時、フレイはベリという名の巨人を鹿の角で戦って倒し、スルトに向かっていた。
この輝きながらというのは、スルトの炎に照らされて輝いている、という意味だろう。
件の魔剣はなくても、何かしらの剣は手にしていたはずだ。
フレイはスルトを相手に戦うが、激しい闘いがあったのちフレイが倒れる。と「ギュルヴィの惑わし」にも書いてある。
その炎に巻かれてしまったようなんだ。
あの魔剣があれば事態は変わったかもしれないが、まぁ、がんばったよ、フレイ。
 
スルトはスルト自身の敵フレイを倒したので、地上に火を投げつけていく。あちこちで火が上がり、燃え広がり、全世界が炎に包まれる。神族も巨人族もみな焼かれてしまう。
 
それから、世界が新生する。
 
炎が収まると、海から緑したたる大地が現れるんだ。
わずかな生き残りと、死者の国から生き返った少しの者たちによって、また新しい世界が始まっていく。
 
で、炎を放ったスルトは?
火神とも思える炎のスルトだけれど、その後、全く名前がない。
どうも自分の放った炎で、スルト自身も焼け死んだみたいだ。
ちょっと残念^^;
 
 

北欧神話ーヒルディスヴィーニとフレイヤ (と春の祭典)

ヒルディスヴィーニ
 
ヒルディスヴィーニ

14階層のボス。
持ち主はフレイの双子の妹フレイヤ。
フレイのイノシシ、グリンブルスティがドヴェルグの作であるように、フレイヤのイノシシもドヴェルグ作らしい。
グリンブルスティ同様、光る毛だったとか。(原本未確認)
ただ、北欧神話のエッダ(古エッダ)の「ヒュンドラの歌」に、ヒルディスヴィーニは彼女の愛人オッタルが変身した姿だと歌われているので「ヒルディスヴィーニ=人間が魔法にかけられイノシシの姿をしている」と単純解釈もできる。
 
800px-Freia_Gestures_to_Hyndla_by_Frølich
「ヒュンドラにジェスチャーするフレイヤ」1895、L. フローリヒ

 
わたくしも「ヒュンドラの歌」を読んだ当初は、愛するオッタルのために情報を聞き出しているフレイヤだけど、その割にイノシシに変身させちゃっていて、愛人とはいえ人間の扱いなんてそんなものなのね〜と思った程度。
ヒルディスヴィーニ=オッタルと思い込んでいた。
けれど、色々調べているうちに違うんじゃないかと思いはじめたの。
 
エッダというのは、北欧神話が文字に残されるずっと前から歌い継がれてきた「話の歌」のようなもので、編纂は13世紀ごろだろうと言われているが、8〜12世紀の間に書き留められたものを集めたもの。
しかも、それが発見されたのは17世紀で、その時に発見された「王の写本」は29編であり、そこに後から別の写本の中の近い内容の古詩をプラスしたものなんだ。
「ヒュンドラの歌」はそのプラスされた別口の1つなんだよね。
 
ヴァイキングの活動範囲は広かった。
同じだけ、アースの神々を信仰した人々がいたわけだ。広範囲に。
キリスト教に改宗するまでとは言っても、その土地土地に、まったく同じ話が語り継がれているとは考えにくい。
伝言ゲーム同様、どこか変化していくものだろう。
詳しく調べていないんだけど、原本が別ということは、どこかアレンジされた二次創作的変化があっておかしくない。よね。
 
それに、パペガでは階層のボスなんだから、それが人間の変身した姿だなんて思いたくない^^;
1度しか会ってないし、メモリの少ないケバダチの頭には、このヒルディスヴィーニがどんな攻撃をしてきたかなんてサッパリなんだけど、フレイヤの愛人というより、ドヴェルグ作の魔法の強いイノシシであってほしい。
 
けれど更に混乱することもある。
「ヒュンドラの歌」のある研究によると、歌の作者はグリンブルスティを念頭に歌った、とみられてる。
そうなると「ヒュンドラの歌」が歌われるようになる前には、もしかしたら、ヒルディスヴィーニは存在していなかった可能性もあるよね。
双子の兄で愛人である(w)フレイがグリンブルスティをもっているのだから、フレイヤもイノシシが欲しくて人間の愛人オッタルをグリンブルスティのように変身させることもあったのではないか。(豊穣のヴァン神族にとってイノシシは聖なる獣でもあるから)
それで歌われたのが「ヒュンドラの歌」だとすると、その歌を聞いた後の人が、フレイヤのイノシシならそれはやはりドヴェルグが作った魔力のあるイノシシに違いない。と思ってそれを神話の事実として他の人に語った。ということもあるんじゃないかな。
 
どう思う?
かくもヒルディスヴィーニはミステリアスな存在ですw
とりあえずパペガは「ドヴェルグ作の魔法のイノシシ」として14階層に陣取ってるのは間違いないと思う。
 
そんなヒルディスヴィーニを語るに、フレイヤを知らなくては話にならない。
 
フレイヤ
 
Nブロメール1852
「フレイヤ」1852、油彩、N.J.O.ブローマー
 
何だかギリシャ神話やローマ神話の女神みたいな絵。
この絵のフレイヤが浮かない表情なのは、どこにいるかわからない放浪する夫を捜し求め、天と地を巡る旅をしているから。
その涙は赤く、大地に落ちると黄金になるんだって。
猫の戦車ってことだけど、猫は情愛の象徴なんだそうだ。
 
フレイヤは、愛、セクシュアリティ、美、不妊治療、金、呪術、戦争、死に関しての女神。
特徴は眉目秀麗で力が強く、もてもて。
その美しさはアースガルド以外の世界にも知れ渡っていて、フレイヤは巨人からもドヴェルグからも狙われる。
そして・・・性的な部分はルーズ。
ヴァン神族だがアース神としてアースガルドにいるのは、
アースとヴァンの戦争での和平協定で人質としてアースガルドに来たから。
その時の人質は、父のニョルズ、兄のフレイと3人だ。
母も人質となって、一家揃って(離散させないように)人質になるはずだったけど、アース神に断られたようだ。
というのも、ヴァン神族って近親相姦OKだから普通のことでも、アース神はそれを嫌っていた。
ニョルズの奥さん(ニョルズの妹)も一緒に来られると近親を許すことになるから入れなかった、というんだ。
 
ヴァン神族
 
ヴァン神族というのは土着の神。
アース神族より前からいたといわれる。
(アース神より前から信仰されてたというのではなく、前からいた神々という設定だろう)
土着の神だから、豊穣の神なんだ。自然と一体というべきかな。
その昔の日本が、今よりも圧倒的に性に対しておおらかだったように、アース神が生まれる前の北欧も、性に対しておおらかだったんだと想像する。紀元前のことだしね。
それでヴァン神族は近親での恋愛OKな種族、という設定なんだろう。
 
しかしアース神はそれを許さない存在。
キリスト教が伝搬するよりも何も、まだ発生してない紀元前に近親がタブー視するようになったのはなぜだろう。
 
人というのは(動物全般)、より強くなれる遺伝子を求めるようにできてると生物専門の友から聞いたことがある。
自分のもってない遺伝子を臭いで(フェロモン?)でキャッチして見つける。
自分と相手と両方の遺伝子をもった強い子孫を残すためにそうなってる、らしい。
(Aの刺激に動じない遺伝子しかもってないなら、Bの刺激に動じない遺伝子をもつ相手を選んで、AとB両方の刺激から身を守れる子孫を作る。ということだそうだ)
近親者をさけるのは、その相手に自分のない遺伝子が感じられないからだという。
娘が父親の臭いが嫌いっていうのは、実は自分も同じ臭いをもっているから避けるように鼻につくのだとか。
(それだけじゃないと思うが^^;)
これによって、道徳や思想的な縛りがなくても、自然と近親での交わりを避けるようにできている。ということだった。
 
とはいえ、人が少なければ臭いを気にしてなんていられない。
昔々の小さな部落では、避けようのない近親交配があって普通だろう。
日本の古い社会では、村に男が子孫を残すためにやってきて子作りをしては去り、村では女たちがどの子も兄弟のように協力して育てる(象みたいだね)という形だったと何かで読んだ。
こうなると、知らず知らずのうちに近親交配(異母姉妹と知らずに、のようなこと)がなされてしまっていただろう。
古い北欧地域でも、やはり近親はあったことだと思う。
けれどアース神はそれを否定する。
紀元前の話だ。
どうしてかな。
すでに近親交配のリスクを目の当たりにしてた、ということなのかな。
それとも、ヴァン神族の近親相姦を否定するアース神族、というのは、キリスト教が介入するようになってから後付けされたことなのかな。
どうだろう。
 
疑問はあるが、まぁ、フレイヤはそんなヴァン神族だ。
それで、兄とも愛人関係。
人間のオッタル(一応英雄ってことになってる)も愛人。
それ以外にも一夜だけの関係あまた。
夜になるとヤギに変身して♂ヤギと遊ぶという。(うわっ)
オドゥル(オド)という夫もいたんだけれど、多分それはオーディンの別名だろうという見解が多数だ。
ロキに言わせれば、アース神族や妖精族でフレイヤと関係していない男はいないだろう、というぐらい。(でも多分、ロキとは関係してない。ロキは馬とも関係するくせに自分の魅力になびかない男だからフレイヤはむかついてるんじゃないかなw)
まぁ、夫はいないも同然で近親や浮気とかの観念も自然のままのヴァン神族なら、それもうなずけるか。
それで、フレイヤはこんな絵になってしまう。
 
1920px-John_Bauer-Freja.jpg
「フレイヤ」(1882-1918) John Bauer
Freya_(1901)_by_Anders_Zorn.jpg
「フレイヤ」1901 Anders Zorn
320px-Marcksduisburg1.jpg
「フレイヤ」1950 Gerhard Marcks


フレイヤのスカートの中にはいつでも男がいる、とまで言われてるためか、ヌードが多いw
美人かぁ? と疑問が浮かぶのが芸術なところかな。
ゲームなどにもよく出るみたいだから、ググって見れば現代の絵の美人さんが見られる。
(ヴァイキング祭りのコスプレなんか、ほれぼれするぐらい美人フレイヤだよ^^)
 
性的に奔放だからこそ、愛欲の神であり、多産(豊穣)の神でもある。
人間の願いも、特に恋愛関係の願いをよく聞いてくれる、ということで、信仰してた人には欠かせない存在だっただろう。
でも彼女はそれだけじゃない。
セイズという呪術使いであり、戦争の神でもあった。
(呪術の部分は、わたくしの独断と偏見で18禁話になりそうなので割愛)
まるで恋愛が仕事のギリシャ神話のアプロディテのようなフレイヤが、戦争や死を司っていたというところは意外に感じちゃう。
 
フレイヤはヴァルキュリャを統括していた。
ヴァルキュリャといえばオーディンの命で動く、戦死者をヴァルハラへ連れてくる女たちだが、フレイヤはその戦死者の半分を自分のものにしたんだ。
つまり、オーディンと半分こ。
オーディンの正妻であるフリングもオーディンに死者を連れて来るように頼むこともあるようだけれど、基本はオーディンとフレイヤが戦死者を分け合う。
・・・分け合ってどうしたんだろう。
フレイヤはフレイヤでラグナロクで「フレイヤ軍」でも出してたのかな?
わたくしにはわからない。
このことで、フレイヤはオーディンの正妻フリングのことではないかとの見方もある。
ここら辺も、地域によって伝承の内容が変化していって、どれが正しいと一本化するのは難しいところじゃないかな。
 
さらに、人間の女性が死ぬとフレイヤの元にいく、という伝承もある。
「名誉な死」「不名誉な死」というのは男たちのことで、女はフレイヤのもとにいくっていうんだ。
フレイヤの元で食事できるまでは断食して自殺する女性の話があるサガもあるらしい。(原本未確認)
 
こんなフレイヤのイノシシがヒルディスヴィーニだ。
どうだろう。
思ったより強そう? 弱そう?
愛欲のフレイヤのイノシシと思えばたいしたことなさそうだけど、オーディンと並んで戦死者を自分のものにしていた強いフレイヤのイノシシと見れば、ヒルディスヴィーニもなかなか強そうだと思えるよね。
どうなのかな。
また、14階層まで行ってみたくなったよ。(無理w)
 
 
 
【余談】 14階層のBGMのこと

この14階層のBGMは「春の祭典」だった。はず。
まぁ、一度しか行ってないんで、13か15階層なのかもしれないけど、ここだったと記憶してる。
(わたくしの少ないメモリじゃあてにならないけどねw)
 
それまで、階層のイメージ、特に色合いかな、
曲の内容ではなくて、視覚的なイメージで選曲してるのかな、と思いながら進んでいた。
でもね、「春の祭典」だと気付いて「んんん」となったんですよ。
だって「春の祭典」って生贄の曲だから。
乙女を生贄にするバレエ曲。
その昔、北欧神話を信仰する者による生贄が実際にあったとわかっている。
しかも作曲したストラヴィンスキーはロシアの作曲家。
ヴァイキングがロシアの一部まで勢力を伸ばしていたのも、今のわたくしは知っている。
もしかしたら、意図的にこの曲を選んだのかな?
と、すっごく気になったんですよ。ここに関しては。
 
で、調べ直しましたよ。
この曲は、今のわたくし達のやり方と同じなの。
こんなの作ったらおもしろい、と提案して、それが通って作られた曲なのね。
ニジンスキー振付のバレエとして世に出たわけだけど、その原案はストラヴィンスキー。
「ニーベルングの指環」が作曲者ワーグナーの原案であったように、ストラヴィンスキーが「少女の生贄」を題材に立案。
「異教徒の少女の生贄の儀式」としてるんだけど、じゃ、その異教って?
ストラヴィンスキーはバレエ曲「火の鳥」の作曲中に、この生贄の幻覚を見たという。
その幻覚を具体的なアイディアにしたっていうことだが…
 
ストラヴィンスキーが生まれたのはロシアの西部、サンクトペテルブルクのあたり。
あああ〜、やはりヴァイキングの範囲じゃないの!
ヴァイキングはサンクトペテルブルクよりちょっと北東に位置するスタラヤラドガを根拠地として、東はヴォルガ河からカスピ海、南はキエフを経て黒海へ、さらにコンスタンチノーブルまでと勢力を広げた。
スラブ人がいたとはいえ、ヴァイキング達は上手に入り込んでいる。
キエフもヴァイキングが建設したという見方もあるぐらいだ。
スラブ系の人たちは否定したがってるそうだけど、事実、ヴァイキングが石碑なども残してる。
20世紀の発掘調査によると、キエフやルーリクあたりも、ヴァイキングの墓は宮廷付きの土地にあった。
こうなると、当時の支配者がスカンジナヴィア人であったと考えていい。
支配者層なら単なる移民より影響力が強いはず。
来たのは男たちなんだから、婿に入り込んでのし上がった、ということかもしれない。
そしてそれは「アース神への信仰があった」ということになる。よね。
 
これを作曲した頃はソ連になる前のロシア帝国の頃。
国教としてロシア正教だったと思うが、祖先の信仰への興味があったんじゃないだろうか。
それが「昔は異教時代もあったそうだよ」という程度の認識だとしても、DNAに沁み込んでるものがあるんじゃないかな。
わたくし個人は無宗教だけど、全てに感謝して生きるべきという仏教観みたいなものは沁み込んでいると自分で思う。
その土地に生まれたから、その土地の文化や歴史をいつの間にか自分の中に受け入れている、っていうのかな。
 
ストラヴィンスキーの後期の作品では信仰心が大切だ、という見方もあるけれど、わたくしはそうは思ってない。
それほど熱心な信仰を感じない。
冠婚葬祭などは国教に従うとしてもね。
(大体においてシャネルとの不倫も有名だしなぁ。信仰心が厚いとはとても思え…)
スノッリがキリスト教を信仰しつつも、先祖達の信仰していたアース神たちを大事にしたように、ストラヴィンスキーも祖先のアース神への信仰を許容していた。つまり、熱心なキリスト教徒にはならなかった、ということもありじゃないかな。
 
そんなわけで、「春の祭典」はアース神への生贄と見ても、そうそう間違ってないと思う。
では、アース神の誰に捧げたんだろう。
「少女(処女)を捧げる」なら、死んだ女達の行く場所、フレイヤへの生贄ではないか。
「春」の生贄の儀式なら、その年の豊穣を願っての生贄だろう。
豊穣の神ならフレイでもいい。フレイヤでもいい。
女だから、フレイヤかな。
そうだとしたら、パペガ、すごい!
14階層のBGMとして、これ以上のものはないでしょう。
(そこまで考えて選曲したとは思ってないし、本当に14階層だったかどうかも怪しいけど^^;)
 
 
長ったらしい憶測まで読んだ方、お疲れ様でした。
「春の祭典」は観ましたか?
わたくし15歳でこの18禁まがいのバレエにショックを受けまして、振り付け師でさらにすごいのもあるのがわかり、
これは音楽だけで十分に芸術だと、以来、音楽のみ学ばせてもらった楽曲です。
「ウエストサイドストーリー」に似ている部分もあります。
(「ウエスト…」のバーンスタインが真似た(盗作? トレース?)というか、影響を受けたってことですけどw)
不慣れな人は音楽だけだときついそうなので、やはりバレエの動画をおすすめします。
今ちょっとググってみたら、年齢確認するきわどいものもネットにはあがってますね。
胸がポロリは当たり前。
異教徒たちの乱交を思わせる振付のものや、最後は素っ裸で(前貼りなんてしない!)踊り死ぬ振付のものまで鑑賞できます。
ニジンスキーはストラヴィンスキーも口を挟んだものとして観るのもいいですが、有名なのはベジャールの振付です。
ベジャールいいですね。素晴らしいです。好きかどうかは別にしてw
(わたくし、四股を踏んでるベジャールの振付は……相撲の影響みたいですけど、ボレロとかは見慣れたけど、やっぱり……バレエに四股は……w)
まぁ、色々な振付がございますので、(もしかしたらアース神への生贄かもしれない)異教徒の儀式をバレエで垣間見たらいかがでしょうか。
Rite of Springで検索すればいくつも出ます^^
 
 

北欧神話ーグリンブルスティと神々の宝の誕生

またまたボスと北欧神話。
興味ない人はスルーで。
 
 
 
第14階層ラストマスのボス、ヒルディスヴィーニ
 
ヒルディスヴィーニ
 

そして16階層ラストには、グリンブルスティ
 
グリンブルスティ

 
それぞれがアースガルドの神フレイ、フレイヤ兄妹(双子)の所有物(乗物)。
大きいほう(グリンブルスティ)がお兄ちゃんで、小さい方(ヒルディスヴィーニ)が妹のだ。
わかりやすいね。
二人とも別の乗物ももっていたけれど、このイノシシも愛用していた。
北欧神話の神々はそれぞれ乗物をもっているけれど、イノシシを所有するのはこの二人だけみたい。
イノシシは多産だから。
多産=豊穣の印なんだ。
二人とも豊穣の神だから、多産の動物がふさわしい、ということみたい。
まず兄フレイのイノシシから。
 
 
グリンブルスティ
 
パペガのグリンブルスティは、こげ茶色してて強そうだよね。
顔にはトゲトゲもあって、近寄りたくないとケバダチは思ってしまう。
神話のグリンブルスティはすごいんだ。
ひかり輝いていたんだって。
 
(略)これは空と海を 夜も昼も どの馬よりもよく走ることができ、またこれが行くところは 夜でも闇の国でも十分に明るくはなっても 暗くなるということは絶対ない。と語った。そんなにも剛毛は光ったのだ。(略)
 <「詩語法」44章>

 
どんな馬よりも速く走れるイノシシなんだね。
スレイプニルよりも速いのかなぁ。。。(さすがにそれはないかな^^;)
猪突猛進って言葉どおり、イノシシの走りはちょっとした弾丸のようなイメージがある。
だからって現実のイノシシは馬より速いとは思えないから、神話の世界とはいえ相応の体格も必要だよね。
それでパペガではこんな大きな体にしたのかもしれない。
でも、剛毛は光り輝き闇の国でも明るくなったというんだから、
パペガで忠実に再現したらまぶしくてゲームできなくなるかもしれない。
茶色くて良かった。
 
驚くのは、
巨人族の優秀なイノシシ、というわけでもなく、世界樹あたりにいる神聖なイノシシ、というわけでもなく、このイノシシはドヴェルグ(小人族)が作ったというところ。
作りものなんだよ。
槍や刀を鍛冶で作るように、このイノシシも作っちゃったんだからドヴェルグの腕前すごすぎる!
 
このイノシシが生まれる発端は、またしてもロキのいたずらからだった。
 
アースガルドの神々はギリシャ神話の神々のように永遠の命があるわけじゃない。
命=老いない ために必要な命のリンゴがある。
不老のリンゴだ。
神々は自分の力の衰えを感じてきたり、白髪が気になるようになると、そのリンゴを食べて若さを保っていたという。
(ほしい!)
そのリンゴを守る女神を、巨人のもとへ騙してつれていってしまうようなことをロキはしでかした。
不老のリンゴが手に入らなくなった神々は、みるみる老いていったそうだ。
 
このいたずらは巨人の殺害で解決したけれど、神々のロキへの不信感が募っていくばかりだった。
そんな神々の視線に、ロキはさらにいたずらを重ねていく。
 
シヴの髪1
 
トール(ソール)は愛妻シヴ(シーフ)のみごとな金髪が大好きだった。
それがわかっているからシヴもその金髪を大事に大事にしていたそうだ。
 
JCドールマン1909
「シヴ」1906、J. C. ドールマン

 
それをばっさりやってしまったロキ。
(訳によれば「剃り落とした」というのもある。限りなくハゲに近い状態にしたようだ)
ロキにすれば、他愛のないいたずらのつもりだったのかもしれない。
何しろロキは義兄弟であるオーディンともよく旅に出たが、トールともあちこち旅に出ている。
愚直なトールと小賢しいロキは、性格が反対なだけに気楽に旅ができる友だったんだろう。
ロキが一番仲良くしていた神はトール、とみる研究者は少なくない。
そんな親しい友達の妻へのいたずら。
それが……
過ぎたいたずらだと知ったのは、怒りに震えるトールを見た時だ。
彼女を元通りにしなければ、体の骨という骨をみんなうち砕きかねない様子だったらしい。
トールにすれば当然だろう。
自分がやられて平気だとして、自分の愛する人がやられると許せない気持ちはすっごく分かる。
 
シヴの髪2
 
トール1872
「霜の巨人とのトールのバトル」1872、M. E. ヴィンゲ

 
トールは北欧神話での雷神であり最強の神で、巨人たちももっとも恐れた神だ。
単純で力持ち、人間には親切だったという。
ノルウェーやアイスランドでは、オーディンよりも愛された神らしい。
ただ怒りっぽく、あっと言う間に殺してしまう。
ロキがアース神の仲間でなかったら、その場で殺されてたんじゃないかな。
 
さてロキの言った黒アールヴについて。
北欧神話には、神族、巨人族、人間族、小人族(ドヴェルグ)、そして妖精族(アールヴ、エルフ)がいた。
妖精族の中でも、
神々に似たリョースアールヴ(光の妖精)
 と
ドヴェルグに似たデックアールヴ(闇の妖精)
の2種類に分かれたようだ。
デックアールヴは黒アールヴともいい、スノッリはデックアールヴがドヴェルグだと言及しているので、同一視されることも多い。
けれどスノッリが必ずしも正しいわけではないので、鵜呑みにはできないと思う。
 
ヴァン神族(フレイを筆頭に)がアールヴだと解釈する研究者もいる。
さらに、ヴァイキングの祖たちはアース神たちへの信仰よりも前から、アールヴへの信仰があったようだ。
(アース神たちの話が作られる前からアールヴの存在を認識して信仰していた、ということ)
アールヴ=先祖霊でもあり、彼らは加護を与えてくれるものであり、信仰の薄さや悪行をすれば害をなしてくると考えられ、供養祭も行われていたらしい。
なので、ドヴェルグと黒アールヴは別の存在ではないかとわたくしは思っている。
 
リョースアールヴデックアールヴ
所在アールヴへイム地下世界、スヴァルトアールヴへイム
特徴太陽よりも美しい(神々と似ている)石炭よりも黒い(ドヴェルグと似ている)
フレイが支配している
他の神々と友好関係

イメージはこんな感じかな。↓
妖精 
 
光の妖精は神々に似ていて太陽より美しい、なら男女問わず美人だろう。
対する闇の妖精なら、ヒールとして格好良さを期待したいところだけど、
外見は総じて醜いとされるドヴェルグに似ているのなら、残念な容姿だね。
(以下、残念な容姿のマンガが続きますw)
 
ロキは地下にもぐって、イーヴァルディ(イヴァルド)の息子たちのもとに行った。
この話はスノッリのエッダが元なので、一応ドヴェルグとして描くと、
 
シヴの髪3
 
この魔法の品々の出来に気をよくしたロキは、さらに多くの品を手に入れようと画策する。
ブロックというドヴェルグにこの品々を見せ、
「俺は賭をしてもいいが、お前の兄弟のエイトリ(シンドリ)でも、これほどすばらしい3つは作れまい。そのためには、おれはこの頭を賭けてもいいぜ」
と、けしかけた。
バカにされ怒ったブロック。
「スヴァルトへイムからもってきた物なんか、兄弟のエイトリが作った物と並べたら、神様方のお目にとまるわけない」
と賭けにのってしまう。
(「スヴァルトへイムから」と口にしてるということはドヴェルグの住む世界とは違うということだろう。やはり黒アールヴとドヴェルグは別の種と考えたほうがいいんじゃないかなぁ・・・)
エイトリの3種

ロキがアブに変身して邪魔をしたにも関わらず、ミョルニルの柄が短いという以外、すばらしい出来の魔法の品々。
エイトリは3つをブロックに手渡し、アースガルドの神々に賭の審判をあおげという。
勝利とロキの首はブロックのものだと、自信をもって送り出す。
 
ロキとブロックがアースガルドの集会所に宝をもってきた。
審判はオーディン、トール、フレイの3大神にゆだねられた。
ロキはグングニルをオーディンに。金の髪をトールに。スキーズブラズニルをフレイに渡し説明をした。
 
アース神たちの神話ができた頃(紀元前)は、槍がメイン武器だったようだ。
主神であるオーディンに槍が渡されるって、これは正道だろう。
 
グングニル
もってるわけないw1つだけ売りに出てたからスクショ撮れて良かった^^

そしてグングニルはオーディンの代名詞のようになっていく。
 
グングニル像
「オーディン」1890年頃、大理石、R. フォーゲルバーグ
 
トールが妻のシヴの頭に金の髪をのせた途端、その頭皮につき、本当の髪のように細く、柔らかく、光って垂れた。
それどころか、以前の髪よりもさらに美しく輝いた。
見守っていた神たちも女神たちも手を叩いて喜んだ。
(トールが一番喜んだんだろうなぁ)
 
そしてスキーズブラズニル。
ガルムのところでも書いたが、このスキーズブラズニルが船の中で一番だという歌も残っている。
 
ユッグドラシルのトネリコ
これは樹木の最高なり、
そして船の中ではスキーズブラズニルが、
アースたちの中ではオーディンが、
そして馬たちの中ではスレイプニルが、
(略)
そして犬たちの中ではガルムが、
 <「グリームニルのことば」44>

 
必要となれば、アースの神々全員がゆうゆう乗船できるほど巨大にもなる船だったらしい。
72700_skidbladner_md.gif
「スキーズブラズニル」1909年、Klugh

 
それでいてポケットに入るぐらい小さく折りたためるって、んなバカなと思うけど神話だから何でもありだ。
その割に、活躍している場面は手持ち資料にもちょっとググっても出てこない。
もしかしたらフレイのポケットに入りっぱなしだったのかもしれないw
 
次はブロックだ。
3つの宝を出して説明する。
腕輪のドラウプニルをオーディンに。グリンブルスティをフレイに。ミョルニルをトールに渡した。
 
ドラウプニル
「ドラウプニル」1984年、アラン・リー 地下の鍛冶場で造りだしてる絵
 
金は力の象徴だ。
それが9夜ごとに8つ生み出すというのは、聖人でも心が揺らぐほど魅力的だろう。
オーディンはすぐにその腕輪を身につけた。
金に輝くイノシシも迫力がある。
上にあげた「グリームニルのことば」には載ってないが、馬よりも速く走れるのだからグリンブルスティは最高のイノシシってことだろう。
ミョルニルも、柄が短いという欠点以外はトールにぴったりとくるものだった。
トールは手にすると頭上でブンブン振り回した。他の神々からはトールが一回り大きくなったようにも見えたようだ。
しかもミョルニルは、そうしたければ自分の肌着の中にしまっておけるほど小さくなるとブロックは語った。
 
ミョルニルのペンダント
出土したミョルニルをかたどった様々なペンダント、スウェーデンのWIKIより

 
ロキの出したものも素晴らしかったが、神々の審判はブロックの勝ちだった。
のちのちの巨人との戦いを考えた時、ミョルニルをもつトールの存在ほど頼もしいものはないという結論だったからだ。
 
こんな経緯でグリンブルスティが生まれ、フレイの乗物となったんだ。
 
Freyr_by_Johannes_Gehrts.jpg
「フレイ」1901、ヨハネス・ゲールス
 
 
彼は大切な場面ではこのグリンブルスティに騎乗して出掛けた。
フレイにとって誇らしい宝だったことは間違いない。
(マンガを除くほとんどの画像が、クリックで拡大するんで、興味があったらどうぞ)
 
妹フレイヤのヒルディスヴィーニは次回に。
 
 
【おまけ】
さて、先の賭で負けたロキ。
頭を賭けたのだから「死」が待つわけだが、神々もこれだけの宝をもってきたロキを殺させるのは忍びなかった。
神々はブロックに対して賠償金を払うと申し出たが、ブロックは拒否。
にくたらしいロキの頭がほしかったんだ。
けれどロキは「掴まえてみろ」と逃げる。(おい!)
ロキには空でも海でも走れる靴があった。ブロックが掴まえられるわけない。
ブロックがトールに掴まえてくれと頼むと、トールはいう通りに掴まえた。
トールは真っ直ぐな男だからね。この場で逃げるのは卑怯だと思ったんだろう。
 
いよいよロキの首がとぶ、と思われたが、「頭を賭けたが、首にちょっとでも傷を付けたら承知しない」とロキ。
頭を賭けるっていうのは、首をはねるってことだと思うけど、頭は頭で首には触るなっていうロキの理屈。
悔しかっただろうね、ブロック。
それでロキの憎たらしい発言元である口を縫い合わせるんだ。
口の上手い男、ロキが喋れなくなった。
それでしばらく、いたずらができなかった。
でもそのことで、同情する神はいなかったそうだ。
 
 
-1.jpg
口が縫い合わされたロキが描かれた石、デンマーク国立博物館
 
ロキの口が縫われちゃってるね。
この石はふいごの横に置くものだそうだ。
ふいごの横ってどうしてかわからないんだけど、ソープストーンでできているとあった。
ソープストーンって氷がわりに使う石だからさらに「?」になったけど、高い耐熱性と蓄熱性があるから高温でも低温でもOKみたい。
低温特性を利用したのが、氷がわりのアイスキューブになるんだね。
北欧では昔からソープストーンの高温特性を利用して、薪ストーブにしているって今回初めて知った。
一度暖めたら、火を消しても1日中部屋を暖めてくれるんだって。
同じ国立博物館のHPにはこんな写真もあった。
 
-2.jpg
 
ロキの頭にw
なんだか、今でも罰ゲームを受けてるように見えてしまうのはケバダチだけかなw
 
 

北欧神話ーヴィゾーヴニル&ヴェズルフェルニル

8月のイベも終わり、夜など秋の虫の音が聞こえますね。
ジンマシンも治ってきたので、北欧神話のまとめ行きますです!
興味ない人はスルーで。
 

ヴィゾーヴニル
 
第12階層のラストにいるボスがヴィゾーヴニル(ヴィゾフニル)という名の雄鶏。
 
ヴィゾーヴニル
 
巨人族というわけではなさそうだけど、大きいね。
ニワトリの突っつきが強烈に痛い!
という小学生時の記憶があるので、この大きさはかなり脅威^^;
このヴィゾーヴニル、神話では黄金色。
世界樹ユグドラシルの一番高い枝に止まっていて、まるで雷光が点滅(ドイツ語なんで言葉は適当じゃないかも)したような輝きを放っていたそうだ。
 
雄鶏というのは一般的に太陽と火のシンボル。
日の出の彼の鳴き声は警戒を現し、闇に渡る光の勝利を指している。
巨人たちは、時を告げるヴィゾーヴニルの鳴き声に頭を悩ませていた。とある。
それは闇(巨人側)を引き裂く光(アース神側)の「かちどき」に聞こえたからなのかもしれない。
 
さて、このヴィゾーヴニルが記載されてるのは「フィヨルスヴィズの歌」のみだそうで、残念ながらわたくしの手持ちにない。
フィヨルスヴィズというのは「グリームニルのことば」にグリームニルがそう名乗ったとあり、またグリームニルもオーディンの別称であるので(オーディンは多くの別称をもっていて、何かの名前が出たらオーディンのことかな?と調べる必要がある。面倒だよw)、結局は、別にまとめられたオーディンの語り(歌)に登場する、ということのようだ。
そこに特記すべきことはないようだが、解説書に面白いことが載っていた。
「スヴィプダーグの歌」に載ってるそうだ。(未確認)
 
主人公スヴィプダーグは、意地悪な継母にメングラッドという女性を捜し出し、彼女の愛を得るように命じられる。
(どんな経緯で命ぜられたのかな?)
亡き母(予言者だった)にヒントをもらうためニヴルヘイム(北の霜の世界)に行き、9つのまじないを教えてもらう。
それから長い旅の末、ヨトゥンヘイムにあるメングラッドの館にたどりつく。
館は炎で囲われた上、獰猛な2匹の番犬に守られていて、入ることができない。
悩んだスヴィプダーグは、入口を守っていた巨人に話しかける。
身の上話でもしたのだろうか。彼に同情した巨人は、犬の好物がヴィゾーヴニルの2枚の羽の肉であることを教える。
2匹の番犬は交互に眠るから、寝た隙に入るなど、できないのだ。
ではその肉を得るにはどうしたらいいか続けて尋ねると、レーヴァテインという剣ならヴィゾーヴニルが倒せると答えた。
レーヴァテインを知らないスヴィプダーグは、しつこくその入手方法を尋ねる。
すると巨人は、シンモア(ムスペッルスヘイムの王スルトの奥さん)にヴィゾーヴニルの尾羽を渡せば喜んでレーヴァテインを渡してくれるという。

 
スヴィプダーグ

 
話は堂々巡りだw
と、唐突に物語は終わる。
スヴィプダーグがメングラッドの想い人であることが判明し、二人が結ばれるから。だそうだ。
・・・多分、いくつか欠けているんだろう。
エッダには、途中欠けてるものがいくつかある。この「スヴィプダーグの歌」も完全版が残ってるわけじゃなさそうだ。
 
ここに出るレーヴァテインはロキが鍛えた剣らしい。
ニヴルヘイムの門の前でルーン文字を用いて鍛えられたという。
(この「ニヴルヘイムの前」というのが闇の武器を意味してるんだろう。正義(アース)に対抗する剣をロキが鍛えた。ということで、伝承が残っていればこの剣ももっと役割の大きな話があったんじゃないかと想像させてくれる)
 
レーヴァテインはスルトの妻シンモラの手に渡り、彼女はレーギャルンという大箱に9つの鍵をかけて保管した。
ヴィゾーヴニルを殺せるのはこの剣だけ、というのだから、これもやはり名刀なんだろう。
パペガでこれはあるのかな?
(新階層のアイテムはアイテム図鑑にも載ってないようで、わたくしにはわからないことばかり;;)
ヴィゾーヴニルの出すアイテムから作れても悪くないね。
 
さぁ、次は13階層だ。
 
 
ヴェズルフェルニル
 
ヴェズルフェルニル

 
13階層ラストマスにいるボス。ヴェズルフェルニル。
なんて小さいんでしょw
パペガでのボスたちは巨人族が多いのでどれも大きい。
このヴェズルフェルニルはどこに所属してるんだろうか。
手持ちの資料からはわからない。
 
(略)トネリコ(ユグドラシル)の枝には一羽の鷲がとまっていて、これが何でもよく知っているのだ。そして、その両眼の間には、ヴェズルフェルニルという鷹がとまっている。(略)
 <「ギュルヴィの惑わし」16より>

 
極寒の世界の天高くにとまっているのはフレースヴェルグ(第8階層ボス)という鷲だった。
このヴェズルフェルニルはアースガルド、アース神たちの住む世界の、世界樹にとまっている鷲の眉間にいる鷹だ。
 AM_738_4to_Vedrfolnir.png
17世紀のアイスランドの写本の挿絵
黒い小さいのがヴェズルフェルニルだw
 
鷲と鷹。
ワシとタカ。
わたくしの記憶が間違っていないなら、確か生物学的には同類。
両方ともタカ科。
個人的には比較的大きいのがワシで、小ぶりなのがタカ、というイメージがある。
鳥類のピラミッドの頂点が「タカ」になってると、生物専門の友人が教えてくれた。(日本ではそうらしい)
オオタカなど、保護されてるにも関わらず密猟がある。
これは「強さ」や「権力」の象徴として、今でも剥製をほしがる人が絶えないからだそう。
(ほら、黒服だらけの怖そうな事務所にオオタカの剥製って、置いてありそうでしょ?)
けれど、保護されているのもあって、餌に不自由しない都心へとなわばりが移動しているらしい。
そのため生態系のバランスが崩れてきてるので、密猟のお陰でなんとかバランスをとってる部分もあるそうだ。
痛し痒しってどの世界にもあるね。
動物保護っていうのは、ともすると自然のバランスを崩してしまう、難しい行為でもあるんだよね。
 
ゲルマンのほうでもやはりタカは貴族の象徴になっていたようだ。
ワシもタカも同じ猛禽で、その強さに違いはなさそうだけれど、タカに気品を感じ取ってたみたいなんだ。
どちらがより知性的か、って、違いなさそうに思えるけど、タカの方が知性的だろう、と思っていたみたい。
(今もそうかどうかは知りません)
 
フレースヴェルグは最北の、(所属は不明だが)巨人族に違い場所にいるワシ。
ヴェズルフェルニルはアースガルドの世界樹(善と悪、生と死、すべてが集まるところ)のワシの眉間に止まっているタカ。
 
これは、
悪・巨人・ワシ
に対する
善・アース神・タカ
を暗に示しているのかもしれない。
また、(確認できる範囲でだけど)どのエッダにもサガにも特に活躍してるわけでもないので、
ヴェズルフェルニルはオーディンの知性を示している(示すための存在)、のかもしれない。
と思うケバダチです。
 
 

北欧神話ーフレースヴェルグ&スコルとハティ

また新階層のボスと北欧神話の話。

フレースヴェルグ
 
フレースヴェルグは第8階層のラストマスにいる。
 
フレースヴェルグ
 
弱々のわたくし。
フレさんと何度も新階層に挑戦しましたが、第8階層の数マス目が最高記録w
たいがい第7階層を歩いてるうちにロビーにいて、やがて新階層をあきらめておりました。
だから、8階層からはスクショなどもってないはずですが、、、
あるのです!
なんと。
2ヶ月ほど前に行ってきたのです!
強い人に最後の最後まで連れていってもらいまして、それなりにスクショ撮ってきたのです!
ビックリでしょw
もちろん、撮り忘れもかなりあるのですがw
このフレースヴェルグも自前のスクショでございます。
写ってる精霊たちは、もちろん、その方のもの。
わたくしは、邪魔にならないよう、時々弓を放っていたぐらいでございますw
(その説はお世話になりました。
北欧神話のまとめがおわったら、wikiにちょっとでも画像アップしたいと思ってますです)
 
ということで、この鷲が、どんな特性をもって、どんな攻撃をしてたかなんて、ま〜ったくわかっていないのです。
見てたはずなんですが、さっぱりですw
5階層までのボスなら、神話に則した攻撃だなと感心することもできたのですが、もう、全くわかりませんw
 
さて、神話のフレースヴェルグ。
持ってる資料では、ほんの一部しか記載がありませんでした。
 
「(略)答えてください。波の上をわたる風がどこからくるのか。誰にも風そのものは見えないのだが」
「フレースヴェルグという巨人が、鷲の姿をして天の一角にとまっているその翼からすべての人々の上に風がやってくるといわれるのだ」
 <「ヴァフズルーズニルの歌」36,37>

 
フレースヴェルグというのは「死体をのみこむ者」「死体を貪り食う者」という意味。
「ギュルヴィの惑わし」でも、このヴァフズルーズニルの歌を引用し説明している。
 
(略)天の北の端に、フレースヴェルグという名の巨人がいる。これは鷲の姿をしていて、飛びたとうとして羽を広げると、その翼の下で風が起こるのだ。(略)
 <「ギュルヴィの惑わし」18>

 
この程度で、他のエッダやサガに登場してる気配はない。

ガルムの記事に書いたが、ラグナロクで叫んでいるようだ。
「巫女の予言」には
en ari hlakkar,
鷲は叫び

という文字だけある。
ガルムが吠え、フレースヴェルグが叫び、天が裂かれる。
という文章をどこかからか引用したんだが、只今行方不明w
逆に、この「巫女の予言」の鷲=フレースヴェルグを指すとは限らないという解説書は見つかったw
まぁ、研究者によって解釈はいろいろなんで、どちらが正しいと読むかは個人に任せます。
 
特に目立った存在ではなさそうだけれど、パペガで採用されたのはどうしてだろうね。
北欧神話では狼のほうが身近だったようで、そればかりじゃつまらないから、他の動物も出していった、ってことかな。
それなら、フレイヤなど猫戦車をもってたんだから、猫も悪くなかったと思うが、名前が見つからないから採用できないかなw
 
フレースヴェルグは「天の北の端」にいた。
ということはニヴルヘイムにいたのかもしれない。
東、または北寄りに巨人族の世界ヨトゥンヘイムがある。
そこよりさらに北の極寒の地にニヴルヘイムがあり、その地下はヘルの住まうニヴルヘルがある。
「天の北の端」というのだから、このニブルへイムの地上高いところに、このフレースヴェルグがいたということじゃないかな。
 
このニヴルヘイムというのは、神々が生まれるよりも前からあった世界で、寒さやすべての気味の悪いものの源とされている。
北欧に住む人々にとって、北風というのはできれば避けたいものだろう。
冬なんか痛い寒さだろうね。
 
寒さと気味の悪いものを同居させた風を起こすもの、と考えた時、腐肉も平気で食べるスカベンジャーのカラスが適役かとわたくしは思ったんだけど、カラスの羽ばたきじゃ弱いかもしれない。
鷲は死肉も食べるけれど、腐肉は食べなかったと記憶してる。
けど、その大きな体と翼が起こす羽ばたきは迫力あって、カラスじゃ到底及ばないよね。
鳥の事典を出すのが面倒なので調べられないけど、寒い地方に行くほど動物は大きくなるから、鷲も日本のそれより大きいはず。
北欧の人々が普段目にする鷲よりも、巨人としてもっと大きい鷲を想像して、それが羽ばたいて風を自分のところまで吹かせているんだ。
南の端、じゃなくて北の端であるからこそ、説得力あるだろう。
昔の人々は、畏敬をもって語り部から聞かされてたんだろうなぁ。

パペガwikiを見たら、フレースヴェルグの攻撃に「風が強い」ように書いてあった。
ちゃんと神話の特徴を入れてるんだね^^
 
 
スコルとハティ
 
第9階層ラストマスにスコル。第10階層ラストマスにハティがいる。
 
スコル
  
この赤い狼が多分、スコル、だよね?
対になってる狼のスクショがないw
撮り忘れみたいだw
何のメモもせずにスクショだけ貯めてあるんで、ハティかもしれないけど、多分スコル。
ハティなら、もっと涼しげな色合いにすると思うから。
(だよね? wiki充実させてくれれば迷うことないのに〜w)
 
というのも、スコルは太陽を。ハティは月を追いかける狼。ということになっている。
北欧神話には狼がいくつも登場する。
パペガでもそれなりに登場させてるけど、狼のデザインをその数だけって難しいよねw
この二頭に関しては色違いの亜種としてもおかしくないし、きっとそうだったんだと思う(姿を見たのは2カ月前なもので、すでに忘却の彼方に飛んでいってしまったw)
 
森を守るため、輝く神(太陽のこと)を追う狼はスケル(スコル)という。もう一頭の狼は、フローズヴィトニルの子ハティで、麗しい天の花嫁(太陽のこと)の前を走らねばならぬ。
 <「グリームニルのことば」39>

 
「森を守るため」という言葉が最初にきてる。
北欧神話に世界創造時、オーディンと兄弟たちが世界を作り上げた。
灼熱の世界ムスペルスヘイムから飛来した炎(火花)から、太陽や月や星などを作ったんだ。
焼き尽くす力のある炎から作られた太陽だから、「森を守るため」という言葉がくるのだろうか。
 
太陽と月
 
太陽が作られた最初は、上も下も、天も地も照らすように、奈落(ギンヌンガガプ)の真上の天の中ほどにおいた。
あらゆる光に(星のことだろう)その場所を決め、あるものは天に置いたが、あるものは、天の下を動き回っている。
(北極点に近い星と、離れた星では動きが大きく違うから、そのことだろうと思う)
 
月の道づれ
太陽が南から
天のふちの上に
右の手を投げ置いた。
太陽は知らなかった
自分がどこに館をもつのか、
月は知らなかった
自分がどんな力をもつのか、
星たちは知らなかった
自分がどこに位置するのか。
 <「巫女の予言」5>

 
オーディンたちが作った太陽や月や星たちの一部は、ひとりでに自分の場所を決めたものもあるが、その後、彼らに神が場所を定め、軌道を決めている。
それ以来、昼と夜が分けられ、年月が数えられたと古くからの知識に言われている。と「ギュルヴィの惑わし」などで解説されている。
 
またその頃、ある父親がいた。
子どもが二人いて、とてもきれいで美しかったので、息子のほうにマーニ(月)と名付け、娘のほうはソール(太陽)と名付け、娘の方は男に嫁がせた。
このことに神々が激怒するんだ。
なんて図々しい名付けなんだ、と怒ったんだろうか。
その兄妹をとりあげて、名前のとおり天に据えちゃうんだ。
ソール(太陽)には太陽の車をひく馬たちを追わせる。
マーニ(月)には月の運行をつかさどり満ち欠けを決めさせる。
 
太陽をひっぱる馬
「太陽をひっぱる馬」「太陽の戦車」 初期青銅器時代(紀元前1400年頃) デンマーク博物館、デンマーク
 
 
金をほどこして輝く太陽を表現し、馬についた車輪は、回る太陽の動きを現しているのだそうだ。
神話ではこの馬には名前がありアールヴァク(早起き)とアルスヴィズ(快速)の二頭が引っ張ってることになっている。
 
太陽の運行は早いですね。まるで、おびえているみたいです。殺されるのが怖いのに、これ以上早くは進めないといいたげに」
すると、ハールが答えた。
「太陽が猛烈に急いでいるのは何も驚くに当たらない。追跡者がすぐ後から迫っているからな。逃げるよりほかに手立てがないのだ」(略)
 <「ギュルヴィの惑わし」12より>

 
この追跡者がスコル。そして月を追いかけるのがハティ。
 
1024px-The_Wolves_Pursuing_Sol_and_Mani.jpg
「The Wolves Pursuing Sol and Mani」 1909、 J. C. Dollman
 
 
このままスコルとハティが追いつかなければいいのに、追いついて呑み込んでしまう時がくる。
それがラグナロクだ。
太陽を呑み込んでも平気なスコル。
月を呑み込んでも平気なハティ。
パペガwikiを見たら、スコルは火系攻撃すると回復するんだね。
太陽を呑み込んでも平気、にしてあるんだね。
今度、行ける時がきたら、水の武器で1回ぐらいダメージ与えてみたいもんだわw
 
さて、スコルが太陽を呑み込むはずが、フェンリルが呑み込むと解釈したお話もいくつか目にしている。
以下は、そう解釈したわけもわかるが、違うと思う理由をメモした。
わかりにくいと思うので、さらにスルーしてくださいw
 
 
 
前述した「グリームニルのことば」にハティは「フローズヴィトニル」の子と書かれている。
この「フローズヴィトニル(Hróðvitnir,)」というのは「悪評高き狼」という意味なので、フェンリルのことを指すと解釈もできる。
また「ギュルヴィの惑わし」ではハティを「ハティ・フローズヴィトニスソン」と呼んでいて、「悪評高き狼の子」すなわちフェンリルの子と強調しているようにも読める。(違うかな? 言語センスのないケバダチなので自信はないですw)
多分、この名前から、ラグナロクではフェンリルが太陽を呑み込んだ。という話が派生したんじゃないかと思う。
けれど、「ハティ・フローズヴィトニスソン」と呼んだ「ギュルヴィの惑わし」でその狼の一族が語られ、「巫女の予言」のフェンリルの一族と同じように書かれているからと、このフェンリルをあのフェンリルと固有名詞解釈すると、フェンリルの出生がおかしくなってしまう。(フェンリルはロキとアングルボサとの子)
ということはこのフェンリルは狼全般を指す普通名詞として読むべきじゃないかと思う。
スノッリがすでにまとめられていた「巫女の予言」やその他のエッダを下地に散文形式でかいたエッダは、わかりやすくとても素晴らしい作品だけれど、二次創作になってるだけ、意図的にか、あるいは単純に間違えてまとめてしまったところもあるかな。と思う。
太陽を呑んだのはスコルでありフェンリルでない。
月を呑んだのはハティでありマーナガルムではない。
と解釈すべきと思うケバダチです。
 
 

北欧神話ーヴァルキュリャ&ルーン

まとまった時間が取れると、すわまとめ〜〜と付箋を貼っていく。
今年のパペガは忙しい。
毎月イベントが開催され、その期間はたいがい2週間。
イベがないホッとする期間も、たった2週間ということになる。
その合間の2週間に、どれだけ北欧神話がまとめられるかってことなのよ。
 
他の人にはま〜ったく関係のないことだけど、わたくしの部屋がきれいになるかならないかにかかってるw
いつまでも本の山をおいておきたくない。
北欧神話に取り組み始めたのが2月。
冬から始めたものが、今はすでに夏。
いえ、8日は立秋だから、もう秋が目の前。
あーだこーだしているうちに、あっと言う間に冬が帰ってきてしまう。
そうなると1年がかりの仕事になってしまうでしょう。
そんなの、イヤwww
 
ということで、自分としては猛スピードでまとめあげていきます。
何度も言ってますが、ゲームには関係ないことですので、興味ない人はスルーで。
自分の整理のためにやってることですので。はい。
 
 
ヴァルキュリャ
 
ヴァルキュリャ(ヴァルキュリー、ワルキュリエ、ワルキューレ)はオーディンに仕える女神。
人間界・妖精界などの出身もいるため、半神とも言われる。
「オーディンの娘たち」という表現があるからか、オーディンの実の子と勘違いしそうだがそうではない。
人につきそう霊的存在のフィルギャ(パペガでいうとスプリガンのような?)から派生したという説や、願望から生まれたという説があり、まぁ両方でしょうとわたくしは思う。
 
ヴァルキュリャ像
「ヴァルキュリア」 1908、ステファン・シンドリング チャーチル公園、デンマーク

仕事はオーディンにより選ばれた戦死者をヴァルハラに連れてくること。
強いか弱いかではなく、来たる巨人族との戦争で力になると思われる人間を集めることだ。
時にはより強い人間を連れてくるために、弱い相手に加勢して負けさせる(戦死させる)。
ヴァイキングとその祖たちにとって戦いは生命の謳歌ともいえることなので、美しい女神が戦場に舞い降りて共に戦うなど、ロマンを掻き立てられる話だったことだろう。
ヴァルハラ宮殿に連れられた戦死者たちは、エインへリアルとして連日訓練に励み、宴会で英気を養う。
その給仕もヴァルキュリャの仕事だ。

ヴァルキュリャは複数で、6人だとか9人だとか12人だとか色々いわれる。
日本での「万葉集」にあたるとされる北欧神話のもっとも古い記録「巫女の予言」を参考にするなら、
 
ヴァルキュリャたちを見た
はるかかなたより来たり
ゴート族(戦士達)のもとへ
馬をはしらさんとする女たち、
スコルドが楯をもち、
他の者はスコグル、グン、ヒルド、ゴンドゥル、そしてゲイルスコグル。
ヴァルキュリャたちの名を数えあげればこうだ。
<「巫女の預言」30>

 
名前のあがった6名になる。以上。(ブリュンヒルドはいないw)
 
「グリームニルのことば」もその後のエッダやサガの元になる古い記録だが、こちらに列記されているのは13名。(これまたブリュンヒルドはいないw)
何名かと問題にするほうがおかしいんだろうな。
何しろヴァルハラにはエインへリアルが大勢いるんだから、ヴァルキュリャもそれなりにいなくちゃ手が回らないはず。
(増減もあったみたいだしね)
 
さてヴァルキュリャも戦場には鎧を身につけていくけれど、それ以外は女性の服装をしていたし、当時の女性たしなみである機織りもする。
人間の機織具はヴァイキングの記事に使ったのを再掲すると、
 
機織り機
 
こんな形。日本のとは違って縦型が使われていた。
ヴァルキュリャの機織具も同じ形式だと思うが、使用するものが違った。
縦糸に重りがついてるのがわかると思うが、ヴァルキュリャの場合「人間の頭」を重りにしていて、糸は「人間の腸」、そして杼(ひ)という横糸を通すものは「矢」で、筬(おさ)という縦糸と横糸をしっかり絡ませるクシみたいなものは「剣」だったと「ニャールのサガ」にある。
写真のような機織具についてる糸は「人間の腸」で、その下にぶらさがってるのが「人間の頭」って、なかなかグロい図だわ><
 
織ろうよ、織ろう
ドッルズ(オーディン)の織物を、
若き王がかつて
持てし織物(戦闘)を。
いざ進みゆき
戦列のなかに馳せつけん、
われらの味方が
武器を交えるところに。(略)
 <「ドッルズの歌」より>

 
サガによっては亜麻も織ってるので、これはオーディン用の特別製のことだろう。
それにオーディンの織物は勇敢な戦士をヴァルハラに連れてくる、ことを指しているようにも読める。
となれば人間の頭と腸というのも、比喩であって恐ろしがることはないか。
そのまま読んでしまうと、不気味すぎるけどねw

そんなヴァルキュリャ達が現れる戦場は、選り抜きの勇士の戦場なので、一般の兵士は関係ない。
一般兵士はヴァルキュリャが現れる恐れを抱く必要がないし、むしろきれいな姉ちゃんと憧れ、もしヴァルキュリャが現れることがあれば自慢できるな〜ぐらいの感覚だったんじゃないかな。
それでなのかヴァルキュリャにはいくつかのロマンチック(?)な話がある。
 
オーディンから白鳥に変身することができる羽衣をもらったヴァルキュリャもいた(全員かもしれない)。
 
「ヴェルンドの歌」にはヴェルンドの兄弟3人が、湖畔で羽衣を脱ぎ、亜麻を織っていた3人のヴァルキュリャを連れ帰り妻にした話がある。
7年は仲睦まじく暮らしたが、8年目にはヴァルキュリャ達は戦場へ行きたい気持ちがもどり、9年目には兄弟たちが仮に行ってる間に白鳥の羽衣をつけて飛び去っていく。(その後、ヴェルンドの悲劇と復讐が書かれている)
 
北欧では同名が多いので、わたくしも理解不足でまだ関係がいまひとつ飲み込めてないものに英雄ヘルギがいる。
どうも、前世も来世もヘルギのようであり、別の話も混ざっているようでもあり、あちこち読んでいるので混乱しているw
しかしヘルギの話には必ずあるヴァルキュリャがいて、愛し合う運命にある。
英雄故に暗殺された時など、あまりにもヴァルキュリャが泣き続けるので、一夜だけ蘇って愛し合った。とか、
彼女の涙の1粒1粒が傷口に降りかかるので、泣かないよう墓から懇願した。とか、
暗殺されたけれど、英雄だったので魂はヴァルハラに昇ることができ、恋人達はそこで暮らせるようになった。とか、
転生しても、やはり彼つきのヴァルキャリャとしていつも側にいたが、たまたま白鳥に変身して後ろを飛んでいたので、高く振り上げた彼の剣で死んでしまった。とか。
 
グドルーン
「グドルーン」1890年頃、K.ディーリッツ
 グドルーンはヴァルハラでヘルギと暮らせるようになった。
ラグナロクでヘルギ率いる亡霊軍を増強させようと、
より精力的に戦死者を集める

 
妄想をかきたてられ話が膨らんでいくのも、美しいからだろう。
ヴァルキュリャたちが美しいだけでなく、馬も美しかった。
馬は真珠色の駿馬で、嵐の空を走り抜け、たてがみは豊富な霜と露とを地上にキラキラと振りまいた。
 
ヴァルキュリャ3
「ヴァルキュリア」 1905、Emil Doepler

 
Valkyriornas_1818.jpg
「かけるヴァルキュリャ達」1818、ヨハン·グスタフサンドバーグ
 
 
妄想も生まれるし、製作欲もわかせてくれる対象だから、音楽や絵画等の芸術作品もかなりある。
ただ、美しい存在であるけれど、勝敗を決める者、つまりは死を決定する者として恐れる対象でもある。
美しさをクローズアップすれば輝くような存在になるだろう。
その役割を前面に出せば、やはり「死」を運ぶ者なのだから、暗い色合いの絵画になるだろうね。
 
 
パペガでのレクイエムイベントで登場するのはブリュンヒルド(ブリュンヒルデ)だ。
ブリュンヒルドといえば大体の人がワーグナーの書いたシナリオ(「ニーベルングの指環」はシナリオもワーグナー)のイメージすると思う。
有名だしね。
けれどブリュンヒルドというと「ニーベルンゲンの歌」もあって、この話も参考にしているという人もいる。
 
「ニーベルンゲンの歌」のブリュンヒルドは女傑なんだ。
力自慢の王女さま。
王女だから求婚者は絶えないんだけれど、「私に勝てたら妻になりましょう」と勝負して、打ち殺しちゃうんだw
それなのに、凡庸な国王が求婚した。
勝ち目があるわけない。
そこで、義兄弟となる力自慢のジークフリートが助け船を出す。
「透明マント」を身につけて手助けし、勝たせてあげるんだ。
こんな男に負けるはずがない。ブリュンヒルドは納得できないが勝負は勝負。
結婚することになった。
婚礼も終わり、名実共に夫婦になるベッドで、まだ納得出来ないブリュンヒルドは抱かれることを拒否w
裸の彼を縛り上げてしまうwww
 
 
ニーベルンゲン
「婚礼の夜」 1807、Johann Heinrich Füssli
 
 
その話を聞き、ジークフリートは国王に変装し入れ替わり、ブリュンヒルドを組み敷く。
それでブリュンヒルドは妻として国王に従うようになるんだが…(あとは略)
 
パペガでのブリュンヒルドは「ジーク…」と口にするんだから、この「ニーベルンゲンの歌」のブリュンヒルドとは違うと思う。
まぁ、こういうイメージだろうと思う人がいたとして、それはそれでいいと思う。
「強さ」は「力の強さ」でもあるし「意志の強さ」でもあるようで、北欧神話の「ウォルスング(ヴォルスング)・サガ」のブリュンヒルドも決して「弱い」女ではない。
 
ファフニールのところでも書いたが、ファフニールを倒したその足でシグルスとブリュンヒルドが出会う。
なぜ、火に囲まれた城の中で寝ていたのかというと、オーディンに背いて勝たせるはずの者を負けさせたから。
ではなぜ背いたかというと、ブリュンヒルドはある約束をしていたからなんだ。
 
ブリュンヒルドはヴァルキュリャの中で一番年が若かった。
オーディンはブリュンヒルドをとくに可愛がり、他のヴァルキュリャよりも多くの知恵や魔法の言葉を教えた。
そろそろ戦地に送り込んでもいい頃になって、白鳥に変身できる羽衣をブリュンヒルドにも渡した。
ブリュンヒルドは羽衣を着るとすぐに人間界に降りていく。
行くべき戦場をオーディンに命ぜられる前、慣らし運転のつもりで飛び出したようだ。
彼女は金の砂の岸のある湖をみつけ、娘の姿に戻って水浴びをした。
それを見ていたのが、近くに住む青年アグナル。
ブリュンヒルドの髪の毛の艶や輝き、身のこなしのすべてがしっかりしていて、すばしこそうだったからヴァルキュリャとわかった。
オーディンの怒りにふれようとも、このヴァルキュリャを掴まえてやろうと決心する大胆な男だった。
アグナルはそっと近づき、アシの中に脱ぎすてた羽衣を隠してしまう。
ブリュンヒルドは水からあがっても、飛ぶことができない。
アグナルは羽衣を返すかわりに約束をさせる。
ヴァルキュリャとしてアグナルにつくことを。
つまり、アグナルに勝たせる約束をさせられたんだ。
このため、オーディンが白ヒゲのグンナル王に勝たせると約束したのに、相手がアグナルだったため、ブリュンヒルドは白ヒゲを負けさせてしまい罰せられることになったんだ。
 
オーディンとブリュンヒルド
「オーディンとブリュンヒルド」1890年頃 F・リーク

「シグルドリーヴァ(ブリュンヒルドのこと)の歌」ではオーディンに背いたので眠りの茨で眠らされた、とだけ書かれてる。
今の前振りは書かれていない。
後々に付け足された理由なんだろうが、実はこの時点ではまだ眠らされていない。
ブリュンヒルドはヴァルキュリャを解雇され普通の人間に戻されただけなんだ。
しかもそのうちオーディンは、可愛がっていたブリュンヒルドを失った淋しさから彼女に頭を下げに行っているw
そしてブリュンヒルドの願いによって、炎が取りまく城の中で眠らされていたんだ。
まぁ、オーディンの威厳が台無しだから、この話はカットされていいのかもしれないw
 
 
ルーン
 
ブリュンヒルドの眠りを覚ましたのはシグルス。
「シグルドリーヴァの歌」には、この時の会話があり、特にルーン(ルーネ)の魔法をシグルスに教えている。
神々がより神らしい力をもっているひとつにルーンがあった。
その神器にはたいがいルーンが彫られている。
が、具体的にどんなルーンを彫ったのかまでの記述は持ってる資料の中にはどのエッダにもサガにもない。
この「シグルドリーヴァの歌」でだけ、ルーンの魔力がまとまって歌われている。
なので、それをメモ。
 
眠り
眠りのルーネ
印を枝や葉の上に何度も彫りつけ、
寝ている者の髪の中か胸の上へ差し込む。
それが落ちるか取り去るまでは決して眠りは去らない
勝利を望む勝利のルーネ剣の柄の上あるいは血溝の上、また剣の峰に彫り、
2度チュールの名を唱える
信じている女に
欺かれない
麦酒のルーネ角杯の上、手の甲に彫る。爪にナウズのルーネ()を印す
蜜酒への災いを防ぐ---角杯を清め、災いに対し身を守り、
飲み物の中に韮を投げ入れる
妊婦の分娩を助けたい安産のルーネ
手の平に彫り、関節を伸ばし、
ディースたちの加護を願う
海路の安全浪のルーネ
舳先と舵の上に彫り、櫂に焼き込まねばならない
医者になって傷を診る
枝のルーネ樹皮の上に、東に向かって枝を垂れる森の樹の上に彫る
恨みを憎しみで返させない
雄弁のルーネ
人々が法廷に行く民会でそれを編み、織り、すべて組み立てる
誰よりも賢くなりたい知恵のルーネ……ミーミルからオーディンが授かった

勝利のルーンは、これ自体もチュールという名をもっていて、
こんな風に重ねて刻まれているものが多数見つかっているそうだ。
シグルドリーヴァ(シグルドの恋人って意味だよね。だからブリュンヒルドのこと)は、この時すでにシグルスの命が短いとわかっていて、11の忠告もする。
ルーンに関しては、
邪説を避け、固く信じて自分のために使用する者にとり、優れた力のルーネ。
これを学んだなら神々が滅びるまで使いなさい。

と言っている。
ルーンは神の得た、神が力添えする魔力だから、ラグナロクが過ぎたら効力はなくなる。
ということなんだろうか……
 
さて、シグルドリーヴァの伝えたこれが、現代に使われるルーン魔術(秘術?呪術?)と同じかどうか、わたくしは分からない。
彼女の言葉とわたくしの解釈が正しいなら、すでに魔力のない文字になっているはず。
けどルーン文字の入ったブレスレットを付けてる人とか、たまにいるよね。
 
英語のアルファベットのようなルーンの基本文字のことを「フルサク」という。
8世紀ぐらいまでは「ゲルマン共通フルサク」は24文字だったそうだ。
ヴァイキング時代に入ると、範囲と活用した人が増え、「北欧共通フルサク」が16文字に減る。
共用が大きくなるほどシンプルになるってことかな。
当初、高価なものに名を彫るために使っていて、高価な物が持てる限られた人が用いるものだった。
ヴァイキングの広がりと共に、オーディンの言葉「決して滅びぬのは自分の得た名声」を形にするかのように、自己証明として自らの名を刻んだり、死んだ神族や主従のために、ゆかりの者が石碑を建てるのが一般化したそうだ。
それが今でも北欧地域にはたくさん残ってる、というわけ。 

昨夜、こんな記事を見つけた。
日曜日にあげられたばかりの記事だ。
スウェーデンの山奥深くに住む人々は100年前までルーン文字と独自の言語「Elfdalian」を使っていた
ゴートランドなどでは近代まで使われてた、というのは読み知っていたが、100年前までって、ほんとに手が届きそうな近い過去だよね。
オーディンへの信仰はなくなってるはずだが、古くからの文化を大事にしていたのかと思うと、感動しちゃう。
魔力を期待というより、ちょっとしたおまじないとして使っていたのかもしれない。
おばあちゃんが教えてくれるルーンのおまじない、という感じなのかな。
そんな庶民の文化が残っていたって、いいよね。
失った言語を戻すのは難しいけれど、おまじないくらいはこれからも残っていってほしいなぁ、と思うケバダチです。
 
 
<おまけ>
日比谷公園にあるルーン文字の碑
 
日比谷
 
ルーン文字にアルファベットをふりあてて使うのが現代流ルーン秘術って感じなのかな?
この碑文はスウェーデン語を振り当てているそうだ。
エッダを読んだ後では、間違った使い方にしか見えないし、それじゃ当然魔力も発動しないよねw
アルファベットなら対応表見ながら読める利点はあるけどね。
 
これはスカンジナビア航空の就航記念だそうだ。
おおっと思ったけど、機械彫りで、な〜んにも感じるものがないのが残念。
ルーンを使うなら、魔力を感じるものにしてほしかったな。
魔力……あるのならね。
 
指輪
 
指輪の内側に彫られたルーン。
チュールもあるように見える。
魔力は……どうだろうね……
 
 


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